Forevermore (ページ11)

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『テンション高っ！』

「だって、テレビの中継で見てたの！」

『ありがと。いろいろ緊張とかプレッシャーとかあったけど、今回の優勝の立役者はAだから。』

「なんで？」

『失敗しても世界が終わるわけじゃない』

「・・・覚えてたの？」

『覚えてた。ありがとうね。』

「どういたしまして。ファッツェル(Fszer)でいいよ。」

ファ・・・なんだって？

『何それ？』

「フィンランドで有名なチョコレートなんだって。」

『いや、それは分かったけど』

「だから、優勝のお礼はそのチョコレートで良いよ。ふふっ楽しみにしてるね」

『いや、買わねえよ』

俺が外に出るの苦手だって知ってんでしょ？

「大丈夫、空港とかにも売ってるから。じゃあ、わたしレコーディングに戻らないといけないから、よろしくね」

電話越にスタッフさんにAが呼ばれる声が聞こえた。

『だから、買わねえって』

最後の俺の叫びを待つ事なく、すでに電話は切れていた。

『これで買っていかなかったら、俺が悪者みたいになる・・・』

次の日、練習拠点のカナダに戻るためにブライアンやハビと一緒にホテルから空港に向かう。

搭乗時間まで1時間程度の時間があるので、仕方なくあくまで【仕方なく】Aに言われたFazerというチョコレートを探す。

さらっと見て回って、売ってなかったら言い訳できると思いながら、空港内のショップを見て回る。

『あっ・・・』

Aがリクエストしたチョコレートはフィンランドでは定番のお土産なのか、はっきり言って探さなくても見つけてしまった。

そのチョコレートとしばらく睨み合っていると、不意に右肩に重みが加わった。

ハビエル「For your girlfriend?」

『・・・Yes,She told me I wanted this yesterday.』

ニヤニヤと顔を覗き込んでくるハビに耐えられず、可愛いピンクの包装紙でラッピングされた物をさっさと手に取って支払いを済ませる。

買ったチョコレートを手荷物の中に入れて、ハビと並んで搭乗ゲートに向かう。

あれだけ買うつもりはなかったのに、結局買っちまった・・・

搭乗する頃には、リュックの中で狭そうにしているAへのチョコレートが潰れてしまわないか心配している自分がいた。