◇喫煙所は愛の嘘に染まる 〈同期×同期〉 ページ6
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「あ、」
会議の合間の休憩時間。
喫煙所に入ると同時にポケットからタバコを取り出し、それを口に咥え
いつものようにライターで火をつけようとした。
そのときになって
「…ライター忘れた」
ライターを持っていないことに気付いた。
・・・ついてなさすぎ。
ライターがなければどうしようもない。
はあ…と小さくため息を吐き出し、咥えたタバコを離そうとしたら
「ん、」
喫煙所のドアが開いた音、はい、と渡された見覚えのある百円ライター。
「あ、櫻井」
「使えば？」
パッと視線を上げれば、櫻井の姿。
差し出されたライターを「ありがと」と短く返事をしてから受け取りタバコに火をつけた。
「ついでにつけて？」
ん、と口にタバコを挟んだ櫻井が、私の方にグッと顔を近づける。
意味が分からない行動。何だかいつもの櫻井らしくない。
「自分でつけなよ」
「かひたおへいに」
「何言ってんの？(笑)」
タバコを咥えているせいか、ちゃんと喋れていない櫻井を見て笑ったら
早くしろ、と鋭い眼差しで訴えられ、仕方なく火をつけてあげた。
「ん、どうも」
「こちらこそ、ライターどうも」
はい、とライターを返すと
櫻井は眉間にシワを寄せながら煙を斜め上に吐き出した。
「あのさ」
「ん？」
櫻井と同じようにフーと煙を口から吐き出す。
喫煙所には櫻井と二人きり。
それが合図だったのかどうかは、櫻井だけが知っていたのかもしれない。
「大野先輩とどうなった？」
「知ってるくせに」
「知らないから訊いてんだけど？(笑)」
何となく意地悪な顔で笑った櫻井が気に食わなくて、肩を軽く叩いた。
ふっと鼻先で笑うその顔は、あんまり好きじゃない。
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違う、私も知っていた。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年1月17日 18時
