◇二人の冷たい嘘の続き 〈同期×同期〉 ページ16
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わたしにも、あなたにも、恋人がいる。
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「今日家行っていい？」
廊下ですれ違いざまに、そっと耳元で囁かれた言葉に静かにコクン、と頷いた。
「じゃあまた」
ぽん、と肩に触れた手はすぐに離れて
振り返ることなく私も櫻井くんから遠ざかる。
櫻井くんには付き合っている人がいる。
それは私じゃない。
私にも恋人がいる。
それは櫻井くんではない。
なのに、櫻井くんは私を必要としていた。それは私も同じ。
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『ごめん、今日無理になった』
愛しい声、なのかもう分からない。
「わかった」
『ほんとごめん』
本気でごめん、と思っているのか分からないから。
だから、私は櫻井くんを必要としていた。
それはやっぱり櫻井くんも同じだった。
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無意識に後ろに振り返ったら、そこにはもう櫻井くんはいない。
何を思って、何のために、どうしてなのかは分からない。
いないと分かっていたはずの櫻井くんが、
そこにいたらどんな気分になるのか知りたいという感情が行動を引き起こした。
そこに理屈なんてない。
櫻井くんのことを必要とするけど、それ以上を求めていないから。
『今日の埋め合わせはちゃんとする』
ポケットの中で震えたスマホを見ると、一件のメッセージが存在を現した。
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朝の電話から、二時間後。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年1月17日 18時
