◆ ページ15
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最寄り駅までの間、満員電車のせいもあり身動きできず
櫻井くんは私のすぐ目の前にずっと立っていた。
ときどきグラッと揺れ動く電車に、櫻井くんの方に倒れ込むと
「大丈夫ですか？」と優しく微笑まれる度、いちいちドキッとした。
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「もうほんとにここでいいよ？」
改札に向かう前に言った言葉を、
マンションの目の前でもう一度櫻井くんに向けて言う。
「ありがとう、送ってくれて」
櫻井くんの腕を振り払って、ペコッと頭を下げると
「Aさん」
離れたはずの手が再び私の腕をそっと掴んだ。
「どうしたの？」
パッと俯かせていた頭を上げると、
櫻井くんは困った顔して笑ったかと思えば
「好きになってもいいですか？」
真剣な眼差しで私を見つめていた。
「え？どういうこと？」
ぐるんとアルコールの回った頭は鈍い。
櫻井くんが口にした言葉を理解するのに時間がかかる。
「いや、もう前から好きなんです」
「・・・え？」
「俺、ずっと前からAさんのこと、好きです」
掴まれた腕にギュッと力が伝う。
それと同時にあっという間に包まれた、初めて知る温もりに驚く隙は見つからない。
「飲み会苦手だって嘘です、ごめんなさい」
三秒経ってやっと理解した。
櫻井くんに抱きしめられていることを。
「俺、送り狼になっていいですか？」
一瞬で、あなたは私を恋に堕とした。
〈 策士の優しい罠は甘い 〉−END−
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年1月17日 18時
