今夜、ロマンス劇場で (ページ3)

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film.3 ページ3

と、走り出した瞬間。

咲也「うわぁ…！」

勢いあまって足が絡まり派手に転んでしまった。

両手に抱えていたペンキも…

咲也「…ない」

すると突然

「うわあぁぁぁぁぁ！！！！」

「大丈夫ですかあぁぁぁぁ！！」

男の人の大声がした。

大丈夫ですと言いながら立ち上がり顔を上げるとそこには…

咲也「………っ！！！！！！」

目の前には赤と青のペンキをかぶった…

咲也「摂津、さん…」

俺はあの、あの大物俳優に…

ペンキを被せてしまった。

何やってるんだなどと怒号が飛び交う中俺は青ざめて頭の中も真っ白だった。

とにかくあやまらないと！もうクビとかそういうことは考えてられない。

咲也「す、すみませんでした！！！！！」

摂津さんの目の前に行き土下座をした。

いくら失敗ばかりな俺だとはいえ、これはもうだめだ。終わった。

しばらくの沈黙。

だが、そんな沈黙を破ったのは…

万里「あっはっはっはっは！お前、おもしろいな！これくらい大丈夫だよ！」

咲也「えっ…」

思わず顔を上げるとそこにはにっこり笑う摂津さん。

万里「佐久間、だったよな？頑張れよ」

そう言い残して今度こそ楽屋へ向かう摂津さん

助かった、のか…

今までの現場の雰囲気がなかったかのように賑やかさが戻った。

もう失敗しないように、失敗しないように…

でも摂津さん、

…優しかったなぁ。

名前、覚えててくれたのか…。

ピリピリしたような、でも、ふわふわしたような。

そんな不思議な感じであっという間に終わってしまった。

ぼーっとしながら片づけをしていると、

「サクヤ～」

「お疲れ」

咲也「あ！みんな！」

みんなが俺のところへやってきてくれた。

シトロンさんと泉田莇くん。

それから、

「きいたぞ咲也、今日もへましたんだって？」

俺の失敗をおもしおがる綴くんだった。