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「や、やっと終わった…」
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ちょうど21時を回った頃。
残業を終えた私は、最寄駅の近くのコンビニに寄っていた。
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「お腹すいた…」
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今にもお腹の虫が鳴きそうで、
弁当の陳列棚から唐揚げ弁当2つと豚汁を取る。
野菜も取らないといけないのは分かってるけど、
お弁当に惣菜があるから問題ない。
あとは、いつものチョコレートとミルクティーにアイス。
それに、ビールにおつまみっと…
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「あっ…」
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ビールを取ろうとしたとき、誰かの手と重なって
思わずパッと離す。
向こうの手も離れて、その人物の顔を見上げると
私の視線に気づいてか、目がぱっちり合う…
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侑李「風羽さん?」
「ちねん、さん…?」
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そこにいたのは、何故か知念さん。
サンダルに半袖短パン姿で、髪は半分濡れたままの眼鏡姿。
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いつも見慣れてる知念さんじゃなかったから、
一瞬分からなくて。
しかも、よりにもよって何故このタイミング…
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侑李「…何でここに?」
「あ、えっと…」
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何でここに?って、それは私が聞きたい。
そんな格好して、カバン持ってなくて、
知念さん、この近所に住んでるのかな…
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侑李「…僕は大貴の家に用があってその帰り。」
「へ…」
侑李「で、風羽さんは?」
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私の心を読み取ったのか、
めんどくさそうに知念さんが答える。
眼鏡越しに大きな黒い目が私を捉えて…
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侑李「…それ、ぜんぶ買うの?」
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いや…
捉えていたのは、カゴの商品たち。
コンビニ弁当にお菓子に、缶ビールにおつまみ、
あとはご褒美のアイスクリームたち。
何か気になるものでも入ってるのかな…
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視線を追うようにしてカゴの中を見ていたら、
知念さんの瞳が私に向けられていたことに気づいて、
私も、じっと知念さんを見つめる。
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侑李「…風羽さん。」
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知念さんの唇がゆっくり動く。
どこか真剣な眼差し。
こんな視線を向けられたのは初めてだった。
漆黒の瞳が私を見つめて、私は目を逸らせないでいて……
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侑李「太るよ?」
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作者名:まりも
作成日時:2023年8月15日 23時