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***
侑李「は…?」
.
突然お礼を言われた知念さんは
訳がわからず呆然とする。
そりゃそうだ。
主語も何もかもぶっ飛ばしてるんだもん。
.
朝一で、急に“お疲れさまでした”なんて言われたら
誰だって戸惑う。
それに、言いたかったのはそういうことじゃなくて…
でも…
.
「え、えっと…」
侑李「お疲れさまって、今日まだ何もしてないんだけど…」
「しゅ、出張のときの…!」
.
まだ、ちゃんと言えてなかったので……
.
モニョモニョと小さくなる口先。
知念さんはしばらく口をポカンとさせて、
思い出したのか、あぁ、と小さく首を縦に振った。
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侑李「うん…風羽さんもお疲れさまでした。」
「は、はい!」
侑李「そんで、今日も一日よろしくお願いします。」
「こ、こちらこそお願いします…!」
.
知念さんが軽く頭を下げたから、
私も慌てて頭を90度に下げる。
そして、顔を上げようと目にかかった前髪を指で退かすと
その隙間から知念さんの黒目がちの瞳が見えた。
.
「知念さん…?」
.
知念さんの声は、いつもより元気がなくて、
ワントーン低い。
表情も何となく暗くて、
何か言いたげな目をさせて…
思わずその顔を覗き込むと、はっとした表情を見せた。
.
侑李「ごめん、何でもないから。」
「そう、ですか…?」
侑李「うん…それより早く行こう?朝礼遅れる。」
「は、はい!」
.
知念さんが早歩きで事務所に向かい
私も知念さんのあとを追う。
結局、本当に言いたかったことが言えなかった。
あとでちゃんと言わなくちゃ…
***
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作者名：まりも
作成日時：2023年8月15日 23時
