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光「あ!風羽ちゃん!」
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次の土曜日。
待ち合わせ場所に行くと、既に八乙女さんが来ていて
慌てて駆けつけると、にっこり笑って私に片手を挙げた。
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「すみません、遅くなりました。」
光「いやいや全然!時間通りだから。」
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駆け足で乱れた前髪を慌てて整える。
久しぶりに見る、スーツじゃない八乙女さんの格好…
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髪がふわっとはねて、前髪が少し目にかかっていて。
首元が開いたシャツを着てるから、
首筋や鎖骨がチラリと見えてちょっとドキドキする。
この人は相変わらずカッコいいな。
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光「ん?」
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私の視線に気づいたのか、急に八乙女さんが振り向いたから、
プイッと慌てて顔を逸らす。
そしたら、クスクスと笑い声が聞こえてきて
慌てて上を向くと、大きな手が私の頭をくしゃっとした。
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光「もしかして見惚れてたでしょ。」
「うっ…」
光「え、それどっちの反応?」
「…っ、察してください!」
光「ほんと風羽ちゃんは相変わらずだなぁ。」
「わっ…」
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今度は、優しくぽんっと撫でられた。
くしゃくしゃ、じゃなくて、撫でる感じ。
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もう、見惚れてました。
見惚れてたに決まってるでしょう?
だって八乙女さんは…
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光「それで、どっか行きたいとこある?”Aちゃん”。」
「え…」
光「へへ。社外だし、久しぶりに呼んでみた。」
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いやだった?って首を傾げる八乙女さんに
私はブンブンと首を横に振る。
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嫌じゃない。
嫌じゃないけど、そう呼ばれるのは“久しぶり”だから
びっくりしただけ。
懐かしくって、どこかくすぐったくて。
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「じゃあ私も、今日は“光くん”だね。」
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作者名:まりも
作成日時:2023年8月15日 23時