42 ページ42
***
“彼ら”の声とは違う…
柔らかいアルトが聞こえてきて、
思わず小さく息を呑む。
.
侑李「風羽さん……っ!?」
.
ぼやけた視界に映る、知念さんの驚きに見開かれた瞳。
それから、私と彼らを交互に見て、
一瞬で状況を把握したのだろうか…
知念さんは彼らから庇うように私の前に立った。
.
侑李「…すみません、うちの部下が何か?」
「あ、いや。俺らはただの知り合いで…」
侑李「知り合い?風羽と?」
「そうっすけど。」
侑李「ふぅん……知り合いなんだ…」
「だからさっきからそう言うてるやろ。」
.
知念さんの棘のある言い方に、少し苛ついている彼。
私は縋るように熱心な眼差しを知念さんに向けていた。
.
侑李「…ただの知り合いなら、こんな怯えないんだけどなぁ。」
「あ?」
侑李「あ、いや…ただの独り言っす。」
.
営業スマイルを浮かべながら、
落ちていた私の鞄を拾ってくれる知念さん。
そして、強引に手首が引かれ、
ぶつかることはなかったけど、知念さんの方によろけた。
.
侑李「すみません、まだ仕事が残っているので
今日のところは失礼します。」
「は?…いや、こっちは数年ぶりの再会なんやけど…」
侑李「こっちも”仕事”ですので。」
.
ぎゅっと包み込まれる腕と
微かに匂う知念さんの甘い匂い。
それじゃ、と知念さんは短く会釈して
私は知念さんに引かれる形でその場を後にした。
.
「……お姉ちゃん。」
.
だけど、ほんの一瞬。
呼ばれた気がして、思わず振り向くと
ほんの僅かに彼女と目が合う。
.
「バイバイ。」
.
振り向いたことを後悔した。
なぜなら…
薬指に指輪を付けた”妹”が、
まるで見せつけるように、彼と腕を組んでいた…
***
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 143人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まりも(プロフ) - ただのおたくさん» お越しくださりありがとうございます!ご期待に添えるお話になるか分かりませんが……まりものペースに付き合っていただけたら嬉しいです😳 (5月27日 21時) (
レス) id: 9a2317564f (このIDを非表示/違反報告)
ただのおたく(プロフ) - 夏ときみの声とから来ました！ほんとに感動して、まりもさんの書く作品にもっと触れたいと思い来ました！これからこの作品を読むのが楽しみで仕方ないです...、これからも応援しています！無理せず、まりもさんのペースで更新してください！ (5月22日 23時) (レス) @page1 id: 78e45d5fd1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まりも
作成日時：2022年12月17日 23時
