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「逃げる、ですか…?」
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目の前にいる知念さんから出てきた言葉に
思わず首を傾げてしまう。
そんな私に、知念さんは
ころりと笑顔を見せて続けてきた。
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侑李「理由は何でもいいよ。用事があるので、とか、
急に電話が、とか。
バレバレな嘘でもいいから逃げて、今まで押し付けられてたけど、
今後は一切やりませんアピールして大丈夫。」
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「…っ、でも逃げるって…」
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…いいの?
良く思われないだろうし、
社会人として失格なんじゃ…
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侑李「逃げていいと思うよ?」
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まるで心の中を読まれてるみたいに
知念さんが柔らかく微笑む。
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侑李「…確かに嫌な顔はされるけど、
そういう人たちにはそれが一番。
もちろん、やるべき仕事はちゃんとやらないとだし、
本当に困ってるなら、助け合うのも大切だけど。」
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ポツリと落ちてきた小さな呟き。
それは本当に自然過ぎて、
私に向けられた言葉だと、最初は分からなかった。
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侑李「それに嫌われてもいいんじゃない?」
「え…」
侑李「嫌われたからって、別に死ぬわけじゃないでしょ。
それで減給されたらうちはブラック会社。やめても問題なし。」
「そ、それはそう…ですけど!」
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ついムキになって前のめり。
だけど、知念さんはそれに対して何も突っ込まず
ただ笑って、軽く頬杖をついた。
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侑李「何かあれば僕も大貴もいるし大丈夫。
バックには知念という頼もしい先輩がいるって
ドーンと構えとけばいいよ。」
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そう言って、知念さんはお猪口に入ってるキラキラと輝く液体を
グイッと一気に飲み干して、ふわふわと笑う。
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なんか、驚いた…
知念さんって、こんなふうに笑って、
欲しい言葉と逃げ道を用意してくれる。
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“もうちょっと頑張れる”
“やれるところまでやってみよう”って活力になって。
“逃げない自分”になれる…
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「…っ、ありがとう、ございます。」
侑李「ん?いいえ。」
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私の中の知念さんに対しての
“怖い”というイメージが払拭されたような。
知念さんに相談して良かった…
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まりも(プロフ) - ただのおたくさん» お越しくださりありがとうございます!ご期待に添えるお話になるか分かりませんが……まりものペースに付き合っていただけたら嬉しいです😳 (5月27日 21時) (レス) id: 9a2317564f (このIDを非表示/違反報告)
ただのおたく(プロフ) - 夏ときみの声とから来ました!ほんとに感動して、まりもさんの書く作品にもっと触れたいと思い来ました!これからこの作品を読むのが楽しみで仕方ないです...、これからも応援しています!無理せず、まりもさんのペースで更新してください! (5月22日 23時) (レス) @page1 id: 78e45d5fd1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まりも
作成日時:2022年12月17日 23時