文スト 短編

バレンタイン【中島敦】 ページ12

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バレンタインなのに、甘くない。全然甘くない。
Aさん(ポートマフィア。敦くんの恋人。両社公認の関係)

　時刻は夕方。
探偵社からの帰り道に人の気配を感じて勢いよく振り返ると、そこには本来は敵であるはずのポートマフィアのA。

「Aさん……どうしたんですか？
今日、約束してましたっけ？」

少し怒ったように、無言で立っているAにビクビクしながら約束はしていなかったはず……と必死に思い出す敦。

「コレ、あげる」

手に持っていた箱を思い切り投げつけられて、慌てて受け取る。
可愛く包装された箱を眺めながら。

「あの、これは……？」
「だから、人虎にあげるって言ってんの」
「……なんで、突然？何かありました？お土産ですか？」
「………………え？今日が、何の日か知らないの？」
「え？今日……やっぱり、僕なにか約束したこと忘れてました？」
「……もう知らない！帰る！」
「え！もう帰っちゃうんですか？これは！？」
「だから、あげるってば！帰る！」

地面を蹴って近くの塀を足場にして、民家の屋根に登る。
その様子を視線で追って、姿を消す前に声を大きくしてもう一度声を掛ける。

「今日、何の日なんですか！？」
「そんなの、探偵社の人間にでも聞けば！」



孤児院で育ってきて、バレンタインを知らない敦くん。
この後、何の日か気になってしょうがなくて探偵社に戻ってみんなに状況を話して何の日か聞く。
ナオミちゃんに「バレンタインデーは女性の方が好きな殿方に好きな気持ちを伝える日ですわ」とか教えてもらって、太宰さんに「敦くん愛されてるね〜」ってからかわれて、乱歩さんに「ひとつ頂戴よ！」って言われたのを「わー！ダメダメ！乱歩さんでも絶対ダメです！」ってわちゃわちゃする探偵社。
Aちゃんが怒ってるみたいだったのは、生まれて初めてマフィアの構成員にあげる義理チョコじゃない、手作り本命チョコをあげるのに緊張してただけ。



(いあ)
どうしてもバレンタインのお話書きたくて。遅刻してるけど。
敦くんと芥川さんのは甘くならなかったので、時間があれば中也さんと太宰さんの甘いの書きたいです。
バレンタイン、可愛くて大好きです。



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