文スト 短編

雨ニモ負ケズ２【宮沢賢治】 ページ2

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Aも中也の許可も無くここで余計な戦闘をする気も無かったので、その手を取る。
手をぎゅっと握られてブンブンと振られると痛い。
ブンブンと手を振られ、されるがままになっていたが、そこでやっとまだ賢治の足の上に乗ったままだと言うことに気が付く。

「あ、ごめんなさい！痛かったですよね」
「大丈夫ですよ、僕、丈夫なので」

にっこりと笑い掛けられて、思わずその笑顔に見入ってしまったけど、それでも、いつまでも上がっているわけにもいかないので、すぐに立ち上がり散乱した荷物を集めようと辺りを見渡す。
どうやら持っていたものはトマトのようで、真っ赤になったものがあちこちに盛大に散らばっている。
集めて、袋に入れたものを手渡そうとすると、キラキラとした笑顔で受け取ってもらえなかった。

「良かったら、それ食べて下さい！」
「え？いや……」
「実家から送られてきたもので、食べきれなくて、どうせ誰かにお裾分けするつもりでしたし」
「でも、こんなに沢山」
「トマトももう旬が終わってしまうので、色んな人に味わって欲しいです！さっき、落として少し傷んでしまったので、傷が気になるようだったら煮てスープにするのも美味しいですよ！じゃあ、僕はこれで」

結局、Aが集めた分のトマトは受け取られることも無く、言い返すこともさせてくれないまま、大きく手を振って、宮沢賢治はいなくなってしまった。
袋に入った赤いトマトがずしりと重い。

「……どうしよう、此れ」

途方に暮れていたが、そんな事よりも早く帰らなきゃと気付き拠点へ向けて駆け出した。







「ただいま帰りました」

どうしようもないので、仕方が無くそのままトマトを抱えて拠点に帰ってきた。

「遅かったな、A……って、なんだそれ？」
「……トマトです」
「そういうことじゃねぇよ！」

机で書類仕事を片づけていた中也に案の定突っ込まれた。
今日の夕餉はトマト料理に決まりだ。





(いあ)
宮沢賢治くんお誕生日おめでとうございます。8/27
文ストの賢治くんは可愛くてすごく好きです。アットホームな田舎から出てきて、まだ若いのに、ちゃんと敬語が使える賢治くんえらい！
宮沢さんは、小学校の時に初めて読んだ注文の多い料理店がずっとファンタジーな猫ちゃんの話だと思ってて好きだったんですが、もう少し成長してから読んだらゾワッとしたのを今でも忘れないです。好きです。雨ニモ負ケズは昔暗唱して、今でも全文言えます。身近な文豪です。

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