世界選手権2019 1 ページ28
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「だから、なんでAが泣くの?」
「うるさい、泣いてないし……」
「いや、どう見ても泣いてるじゃん」
今年の世界選手権、昌磨は表彰台に乗れなかった。
順位なんて興味が無かった昌磨が、勝ちにこだわった今シーズン。
優勝したいって挑んだ試合だったのに。
でも、本当は、私にとっては順位なんてどうでもよくて。
そんな事でじゃなくて。
私は、目の前にある昌磨の顔を挟むようにして、思い切りほっぺたに手のひらを叩きつけた。
バチンッと音がして、昌磨が思わずなのか「痛っ!」と吃驚していた。
「……もう、二度とあんなこと言わないで」
「あんなこと?」
ほっぺに当てた手をそのままに、口を開く。
主語の無いお願いじゃあ、昌磨には分かってもらえなかったけど。
「自分にガッカリとか……もう二度と言わないで……」
「そんな事言われても、ガッカリもするでしょ……優勝したいって言ってたのに、台にも乗れなかったとか」
「結果は、優勝できなかったし、台にも乗れなかったけど、でも、私もファンの人達も、みんな昌磨が優勝できなくて残念なんて思ってないし、ガッカリもしてないし、
そりゃ、昌磨が悔しい気持ちも分かるし、私だって悔しいけど、でも、自分にガッカリなんて言わないで……
いっぱい落ち込んで、演技振り返って反省してもいいけど、そんな言葉で自分を傷つけるみたいな言い方もうしないで……」
喋るのを途中で止めてしまったら、涙でその続きが言えなくなりそうで、一息に気持ちを伝えた。案の定、言い切った今は、ボロボロ涙が出てきてしょうがないんだけど。
順位なんて、どうだって……良くないかもしれないけど、それでも、昌磨にはそんなこと言わないで欲しかった。それが、悲しくて、止まらない涙を昌磨が両手でほっぺを撫でるように拭ってくれた。
「ごめん……。Aのこと泣かせて。
でも、やっぱり、自分にがっかりしたのは本当だから……。
だけど、ガッカリした分、もっと練習するから。ちゃんと勝ちたい」
撫でられていたほっぺに力が入れられて、目線を合わせられる。その真っ直ぐな目に、あぁ昌磨だなって思った。
「応援してよ」
「もちろん」
お互いのほっぺを触り合っているような体勢が今頃なんだか笑えてきて、吹き出してしまった。
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えん(プロフ) - いちごみるくさん» いつも読んで下さってありがとうございます。なかなか更新できず申し訳ないです。のんびりですが、また更新しますので、また読んでいただけると嬉しいです! (2019年4月2日 22時) (レス) id: 45961fa903 (このIDを非表示/違反報告)
いちごみるく - いつも見てます!いつもキュンキュンしてます!更新楽しみに、してます (2019年4月2日 9時) (レス) id: 2343d39908 (このIDを非表示/違反報告)
いあ(プロフ) - 蒼華さん» コメントありがとうございます!お返事遅くなって本当にごめんなさい(>_<)今、一つお話を書いているところなので、もう少しでこちらにもアップできると思うので、宜しければまた読んでもらえると嬉しいです! (2018年12月12日 23時) (レス) id: 3bc74a413c (このIDを非表示/違反報告)
蒼華 - とてもキュンキュンします!更新待ってます! (2018年11月7日 19時) (レス) id: e6c6cb75be (このIDを非表示/違反報告)
蒼華 - とてもキュンキュンします!更新待ってます! (2018年11月7日 19時) (レス) id: e6c6cb75be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いあ | 作成日時:2018年5月1日 22時