かれし と わたし

vs小学生 ページ1

「Aちゃーん！」

「わっ！」

いつもみたいに昌磨の練習に付き合うのと、自分の練習を兼ねてリンクに来た。

支度を済ませてくると、昌磨がもう練習に入っていて相変わらず練習バカだなって。

エッジガードを外して氷の上に立ったら、先に滑っていた小学生クラスの男の子が、すぐに後ろから抱き着いてきた。

「ビックリした。
危ないから、いきなりぶつかってくるの駄目だよ」

腰のあたりに巻き付いている手をほどいてクルッと振り返ると、やっぱり予想通りの顔で。

毎日の挨拶みたいなものだから、実際そんなにビックリしてなくて、構えてるから転ぶこともないんだけど。

一応、危ないことはしちゃ駄目だよって教えてあげた。

と、言っても何回言ってもやめてくれないから、ほとんど無駄なんだけどね……。

「だって、毎日Aちゃんに会うの楽しみなんだもん！
今日も一緒に滑ろ！」

最近、すごく懐いてくれてる小学生の男の子。

リンクに来る度に、こうやって嬉しそうに傍に来てくれたり、抱き着いて来たり、スピン教えてって言ってくれる。

……可愛い。

弟が出来たみたいでめちゃくちゃ可愛い。

小さい頃の昌磨に似てる気がする、可愛い。

危ないよって注意するけど、最終的にはついついあまやかしちゃう。

「早く滑ろ〜！」

正面を向いたところ、今度は前から抱き着かれた。

「わっ……」

もう今日は抱き着かれないだろうと油断してる時に、抱き着かれたものだから、滑ってふらついてしまった。

ヤバいと思ったけど、もうどうにもならないので、このまま後ろに転ぶ衝撃に耐えようとしたけど、お尻にも背中にも腕にも「痛い」って衝撃は来なくて。

代わりに、ポスッと柔らかい感触が背中に当たった。




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