ローリングコースター４

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さっと振り払ったせいで、
さくらんぼは、大毅の手から、床に落ちた。


胸に、言いようのない痛みが走る。


床のさくらんぼ、拾ってたら、
大毅も俺の前にしゃがみ込んだ。


「とも。
さっきも言うたけどさ、
俺は別れたつもりないから」


じっと顔見つめられたら、
何もかも見透かされてまう。


「何言うてんの、俺ら、とっくに」


「別れてなんかない。
少し離れるだけや、そやろ？」


俺の気持ちなんか、大毅にはお見通しやねん。

隠すことなんか、出来へん。


「・・・」


「ともが役者として確固たる地位を築くまで。
会わへん。
電話くらいはしてまうけど。
それや、あかんの？」


「大毅・・・
大毅はそれでええん？
俺と別れたら、自由やねんで。
隠れてコソコソせんでええし、
もしかしたら、
他の誰かと出会って結婚かって」


「俺は世界一好きな子と結婚するって決めてるねん。
それは、ともやから」


「そやけどっ。
俺、・・・会われへんの、辛いねん。
恋人て関係でおったら、
どうしても会いたなるから、
やから、別れるしかないねん」


「ともはほんまに、」


「ごめん、勝手よな」


「可愛いてたまらん」


「なっ、に、言うて」


最後まで言わせてくれへんかった。


頬包まれて、優しいキスされて。


胸がじんとして、頭、ぼんやりしてくる。


「とも、アイス溶けてまうわ。
パフェ食べよな」


もっとキスしてて欲しいやなんて。


俺、ほんまにわがままや・・・



出会った個室。


出会った時と同じように、
向かい合うてパフェを食べながら。

大毅の話を聞いた。


「俺な、今年度いっぱいで県庁辞めるねん」


「ほんまに？」


「うん。
やりたいことあるから」


「そうなん、何するん？」


「それはまだ内緒」


「えー、ずるいな」


大毅が急に改まった顔して、正座なんかするから。

俺もなんか、背筋伸びる。


「夢が叶ったら、ともを迎えに行きたい。
それまで寂しいけど。離れよ？」


俺には、断る権利なんかない。


「・・・」


「あくまで離れるだけな！
別れてはないからな！」


大毅がムキになって付け足してる。


泣かんように、うなづくだけで精一杯や。


お互い共倒れにならんように。

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