プロローグ ページ1
季節は初夏。
晴天の下、
息を切らしながら
一人の男が狭い路地の中を
駆けていた。
男は豹柄のバンダナを頭に巻いている。
パンツの左ポケットからは、
ウォレットチェーンが
半分、楕円を描き垂れている。
その他の服装は……
まぁ、一言で言えば
『不良』
ですね……。
「ハア、ハア、ハア」
不良の息はどんどん荒くなる。
「くそ！何だアレ！
ツいてねぇッ！！」
私はその不良のあとを
疾走して追っている。
「白井さん！計算できた？
そろそろ飛んで！」
後方からついてくる女の子に
私は指示をする。
「わかりましたわ！
A様！！」
駆けていた不良は振り向いて、
追跡を確認した途端……
「え？」
不良の顔には突如、影が現れた。
ゴッ！！
ドサッ……
「ぐェッ！！」
「『
暴行未遂の現行犯で
拘束しますの」
「イデデデデデデッ！！」
ライトブラウン色の
ツインテールをした
小柄な少女が、
男を、うつ伏せにして
その背中にまたがる。
左手でバンダナをした頭を
抑えつけ……
右手で、ミシミシミシッと
男の右腕を上に伸ばし手首を曲げて
極めていた。
「おとなしく観念してくださいな」
「放せくそ！この━━」
「さもないと
腕をヘシ折りますわよ？」
少女は黒い笑顔を浮かべながら、
脅しの言葉を口にした。
「あだだだ！！」
「白井さん！やり過ぎ！！」
私はツインテールの少女を
制止する。
「はい。手錠を使って」
そう言って白井さんに
手錠を渡す。
「確保！」
ガチャリと男の両手に手錠がかかる。
「あいかわらずのお手柄だね。
白井さん」
「いえ、それほどでもありませんわ。
さてっと……」
白井さんは、くるっと首を回し
別方向を向いた。
「
そちらの方、大丈夫ですか？
今助けに━━」
路地裏にはプスプスと焦げた
数人の不良達が倒れ、一人の少女が
無傷で立っている。
「ん？あ！黒子。A」
「……通報にあった路地裏に
連れこまれた女性というのは
お姉様の事でしたの……」
「どーしたの？A？」
「
＊＊＊＊＊
『学園都市』
東京都西部を切り拓いて作られた
この都市では
“超能力開発”が
学校のカリキュラムに
組み込まれており
二三０万の人口の
実に八割を占める学生達が
日々
『頭の開発』
に取り組んでいる━━
私は……そんな学生の一人です。
名前は
『
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作者名：あすと | 作成日時：2020年12月5日 13時
