約束 ページ5
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とある日曜の朝。
休日にも関わらず、家の中はしんと静まり返っている。
一郎は誰もいないリビングを見渡し、首を傾げた。
「あれ…？」
そこで、今日の兄弟全員の予定を思い起してみる。
時間曜日関係なく激務をこなす二郎は、昨日からの深夜勤務がまだ終わっていない。
平日よりも土日の方がはるかに忙しいと、休日は朝早くから出勤している三郎。
野球部に所属している四郎も、今日は練習試合があるからと早々に出かけて行った。
つまり、この家には在宅勤務の自分とあともう一人いるはずなのだが、姿が見当たらず一郎はもう一度彼の部屋をのぞきに行こうと踵を返す。
「ケホッケホッ」
「あ」
ちょうどそのタイミングで、奥の和室から微かに咳き込む音が聞こえる。
一郎はくるりと方向転換すると、和室の襖をそっと開けた。
「大丈夫かー？」
「んー…」
「大丈夫じゃねぇな」
「だいじょぶー…」
開けた襖の先には、畳の上に横たわる探し人の姿。
くたりと力の抜けた後ろ姿からは、生気が感じられない。
「寝てるとしんどくないか？」
「もう、起きてるの、疲れた…」
「そりゃあ大丈夫って言わねぇのよ」
どうやら座位を保てるほどの気力、体力はもう残っていないらしい。
常より肩を大きく動かし浅い呼吸をしながらも、起き上がる気配がない。
「よっこらせ…」
「……んふふ…おじー、ちゃん」
「おじいちゃんじゃないわい」
少しでも呼吸が楽になるようにと、座って伸ばした足の間に五郎を座らせ、そのまま後ろに寄りかからせる。
気休めではあるが、胸の辺りをくるくると撫でてやると、僅かにでも表情が緩んだようだった。
「いい天気だなぁ」
「散歩、したい」
「じろくんの許可が下りたらなぁ」
「絶望的、だ」
二人の視線の先には、庭の垣根の向こうに見える青い空。
最近は近場の散歩すらままならず、気落ちした様子を見せることもある五郎だが、過保護で慎重な我が家の主治医の名前が出ると悪戯っ子のような笑みを見せた。
「まぁ、もうちっと落ち着いたら、おいらも援護射撃してやっから、そしたら一緒に行こうな」
「うん。早く、行きたい」
ささやかでも目標や希望があるのはいいことだ。
幼い頃から、多くの我慢やあきらめを強いられてきた五郎にとって、日常の小さな約束も病と闘う力になる。
だから。
「早く元気になれよ〜」
大切な君に、小さなエールと約束を。
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にひひ - とっても面白かったです！ありがとうございました。 (2020年8月1日 7時) (
レス) id: 6032ca778f (このIDを非表示/違反報告)
はちこ(プロフ) - にひひさん» お待たせして、申し訳ありません。ご希望に添えたかどうか不安ですが…リクエストありがとうございました。 (2020年7月31日 18時) (レス) id: fdcdcf1450 (このIDを非表示/違反報告)
にひひ - リクエストです。雨の日に発作が起き家の治療でも治らず病院へ発作が収まり家に帰るとまた発作がというお話をお願い致します。発作はどっちも大きいものでお願いします (2020年7月24日 17時) (レス) id: 6032ca778f (このIDを非表示/違反報告)
はちこ(プロフ) - にひひさん» ご期待に添えるものが書けるかどうか分かりませんが、それでもよろしければリクエストお受け出来ます。 (2020年7月23日 21時) (レス) id: fdcdcf1450 (このIDを非表示/違反報告)
にひひ - リクエストいいですか？ (2020年7月23日 15時) (レス) id: 6032ca778f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はちこ | 作成日時：2020年4月23日 20時
