愛の形１ ページ5
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「うーん…高いなぁ…」
「本当に大丈夫なの？」
「いろいろ調べてんだけどねぇ…」
2週間前から高熱に悩まされている五郎。
熱が出た時点ですぐに出来る検査は一通り行なったが原因は特定出来ず。
6日前と昨日の昼間に少し下がることもあったが、結局数時間もするとまた体温計の数値は38℃を超え、兄弟達をぬか喜びさせていた。
「ごろー、これ飲めるかー？」
「………」
「水分摂るのもしんどいなら、もっかい点滴入れよう」
「うん。さっき起きてひと口飲んだっきりだから、その方がいいかも」
続く熱にもともとない体力はとうに底をつき、起き上がることはおろか、声を出すことさえしんどいようだ。
一郎からの問いかけにも僅かに首を横に振るだけだった。
「いっちゃん、じろちゃんただいま。夕飯作っちゃっていい？」
「あ、おかえり、さぶ！ごめん、俺用意するからさぶは休んでな」
「じゃあ、一緒にやろ〜」
「さぶ、いい子っ」
「でしょでしょ〜」
リビング横の和室の扉が開き、仕事帰りの三郎が小声で顔を出す。
それに慌てて立ち上がった一郎は、目で二郎に後を託すとキッチンへと向かった。
それを見送った二郎はスタンドに新しい輸液パックを下げると、五郎の左手に留置したままにしておいた針に繋げる。
「ごろう、もっかい水分入れるからなぁ。これ入ったら少しは楽になるから。頑張れよー」
眠ってしまったのだろうか、何の反応も返さない五郎の、汗で額に張り付いた前髪をそっと梳いてやる。
五郎以外の兄弟は比較的身体が丈夫だ。
三郎は子どもの頃から多少呼吸器系に弱さはあったが、今は体力もつき上手くコントロール出来ている。
他3人も当然、人並み程度に風邪をひいたり何だりはもちろんあるが、大きな病気をしたり酷く体調を崩すことは殆どない。
そのため、この部屋に入れられたリクライニングベッドや家にある医療機器を使うのはほぼ五郎だけだ。
この部屋で、弟の寝顔を見ながら、何故彼ばかりがこんな辛い思いをしなければならないのかと、遣瀬ない思いに駆られるのも一度や二度ではない。
二郎は滴下速度を調節しながら、思わず大きな溜息を吐いた。
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作者名：はちこ | 作成日時：2020年8月30日 21時
