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確かあれは…小学5年の夏休みだっただろうか。
晴れ続きの暑い日だった。
午前中の自由プールの帰り道、河川敷の側を通りかかった四郎と五郎に、遠くから声がかかる。
「おーい！舞賀ー！何やってんのー！？」
2人全く同じタイミングで同じ向きに振り返る。
そこには、同級生(と、数人違う学年も混ざっていただろうか)が野球をやっていたようで、真っ黒に日焼けした見慣れた顔が並んでいた。
「自由プール行ってました」
「ふーん。なー、一緒にやんねー？」
土手の上まで小走りで上がってきたのは、四郎の友達で、確かよく野球も一緒にやるようなことを言っていた気がする。
「いや…今日はいいよ」
「えー何で。いいじゃん、なんなら五郎も一緒にやろーぜ」
「だから、いいって言「いいよ！やろうぜ」」
「おっし！行くぞー」
「ちょっ！ごろくん！？」
四郎が焦って止めようとするのを躱して、誘ってきた同級生の後を追って草の生茂った斜面を駆け下りる。
五郎に野球の経験はない。
むしろ、経験したことのあるスポーツなんて数える程だ。
砂埃が立つ。
全力で走る。
それに加えて、今の時期は炎天下で長時間身体を動かすことになる。
この条件で、まず自分に許可が下りるはずがないことは、子どもながらに理解はしている。
理解はしているし、いつもなら我慢出来ているのだけれど。
もう半分、意地のようなものだったのかもしれない。
断る寸前、ほんの一瞬こちらに向けられた視線。
その動作だけで、片割れの思考はほぼ完全に理解出来た。
だから、四郎がある程度その誘いに魅力を感じていて、しかしそれほど執着もしていないということ。
そして今回の判断基準が完全に五郎だったことも。
「ごろくん！俺お腹空いたし帰りましょう！」
「やだ。しろも早く来いよ！」
「ごろくん…」
四郎が酷く戸惑っていることは分かっている。
末っ子気質で甘えたな部分もあるが、基本的に普段こういったことに対して我を通そうとすることは少ない五郎を知っているから尚更。
それでも何故か自分を抑えることが出来なかったのだ。
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作者名：はちこ | 作成日時：2020年8月30日 21時
