くしゃみ ページ6
五右衛門side
A「お父さん…」
五右衛門「こっちにおいで。」
普段より元気の無い声で起きてきた朝。頬っぺが赤くなり、力なく抱きついてきたAを受け止め足の上に座らせた。
おじいちゃん「おはようさん。どうした?」
A「クチンッ!!」
おじいちゃん「何?風邪かい?」
おでこに手を当てただけでも分かる程の熱。
五右衛門「38.6℃」
おじいちゃん「こりゃまた高いな。」
園内でも風邪が流行していた為移ったのだろう。息を切らしてぐったりしている。
五右衛門「A、病院行こう。」
A「………」
余程行きたくないのか服をぎゅっと掴み、顔を疼くめ首を振る。
怖いのだろう。
五右衛門「大丈夫。ずっと傍に居る。離れる事は絶対にしない。」
疼くめていた顔を少し見せ、涙を貯めてこちらを見てくるA。
A「ずっと一緒に居る?」
五右衛門「ああ、ずっと一緒に居る。」
A「本当に?」
五右衛門「もちろんさ。ほら、おいで。」
寒くないよう厚手の服を着させてやっとの事で病院に行く準備をし、叔父様叔母様の家を出る。
おばあちゃん「私達もここに居るからいつでも来なさい。」
五右衛門「かたじけない。」
外に出れば冷たい風が吹き付け、息が白くなる。
やはり厚着をさせて良かった。
病院の待合室。名前を呼ばれるまでの間が長いように感じる。
A「……ックチン!」
寒さに過敏になっているのだろう。肩をすぼませ震えている。抱っこしているAにブランケットを掛けると段々と震えが収まるようになった。
看護師「石川Aさん。こちらどうぞ。」
A「お父さん、手握って欲しい。」
五右衛門「いいよ。」
診察を終えて呼ばれるのを待っている今、診察中泣くのを我慢して溜めていた涙を静かに沢山流し、小さな手をぎゅっと離さずにいた。
五右衛門「よく頑張ったね。」
背中を摩る暖かい大きな手にとても安心したのか一層涙が出てくる。
A「お父さん、今日はずっとこうしていたい。」
五右衛門「いいよ。」
A「嬉しい。」
受付「石川Aさん!こちらどうぞ〜。」
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作者名:緋色 | 作成日時:2021年10月3日 18時