重ねる ページ37
日も暮れ、窓から月明かりが差し込む病室。
震える手をそっと握られ、顔を覗くお父さん。
見返す勇気がなくてずっと俯いたまま。
五右衛門「どうしてひとりで行動した?あれ程注意したではないか。」
A「………。」
ルパン「さよ先生、だっけか?Aは先生を守ろうとしたんじゃないか?」
次元「どういう事だ。」
ルパン「話をした時お腹摩ってただろう。」
五右衛門「?!」
ルパン「自分が狙われている事に気が付いて他の先生に助けを求めようとした。」
次元「そんでその作戦に失敗した。」
ルパン「そう!そういう事だろう?A。」
小さくこくりと頷いた。
A「お母さん居なくなったら赤ちゃん困る。寂しいって思って欲しくないもん。」
五右衛門「それを知っていたなら、何故教えてくれなかったのだ?」
A「先生達が話してるの偶然聞いちゃって。でも、皆に話すのは遠足が終わってからって言ってたから、それまではさよ先生とのふたりだけの秘密だったの。黙っててごめんなさい。」
五右衛門「お父さんの目をよく見て。」
俯いていた顔をゆっくり上げてパチッと目を合わせた時には、自分でも分かるくらい涙が海のように溜まっていた。
五右衛門「分かった。よく守ったね。先生との約束も、お母さんと赤子の事も。」
五右衛門「でもね、Aはお父さんの大切な一人娘だ。他の誰でもない。Aはお父さんの大切な宝物だ。お父さんにはAが必要なんだよ。」
五右衛門「だから、こんな事はもうしない事。いいね。」
A「おとう、さん………」
大きな目に溜まっていた涙は大粒の涙として溢れ出し、この小さな手では拭いきれないほどになっていた。
震えている小さな肩を摩り、そっと抱き寄せられる。
壊れ物を扱うかの様にそっと抱き上げ、落ち着いた頃にはもう重たい瞼は閉じられていた。
寝静まる病室。
泣き疲れたのか抱っこをしたまま寝落ちてしまったA。
ルパン「五右衛門。寝たか?」
五右衛門「ああ。ぐっすりだ。」
次元「随分長い事泣きじゃくってたな。やっぱガキはガキだ。」
五右衛門「迷惑被(こうむ)ったな。すまない。」
次元「五右衛門、お客さんだぜ。」
ドアの外を見るとさよ先生が深々と頭を下げていた。
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作者名:緋色 | 作成日時:2021年10月3日 18時