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話をしていくうちに自然と打ち解け、ケイタ君もお母さんが居ない事を知った。
ケイタ父「先日、ケイタから聞いたんです。Aちゃんもお母さんが居ないと。先生の話をたまたま聞いてしまったらしくて。」
こめかみを掻いて子供達を見たケイタ君のお父さん。
ケイタ父「恥ずかしながら、その話を聞いてとても泣いている自分がいたんです。勝手ではあるんですけど、ひとりではなかったんだなと思えた。」
五右衛門「そなたの話を聞いてとても安心した。」
ケイタ父「??」
五右衛門「状況は違えど、私もそなたと気持ちは似ているようだ。私も張り詰めていた気持ちが解けたような気がする。」
五右衛門「私も仕事で出張が多く、普段寂しい気持ちをさせているなと感じていたが、今日迎えに来て気がついた事がある。ケイタ君と遊んでいるAは安心しているようだ。Aのあんな顔、いつぶりだろうか…これからも仲良くしてやってください。」
ケイタ父「はい。もちろんです。」
柔らかく笑うケイタ君のお父さんの目には少しの涙が溜まっていた。
(((カラカラ………)))
さよ先生「あの、すみません。そろそろ時間も遅くなりますし、ケイタ君とAちゃん呼んできましょうか?」
外は見るともうすっかり星がキラキラし始めていた。
五右衛門「そうだな。すまぬがそうしてもらおう。」
さよ先生「呼んできますね!」
五右衛門「ありがとう。」
外へと行ったさよ先生は子供たちを呼ぶとこちらにも気が付き、泥だらけになっているであろう手を振ってきて、その様子を親同士、声を上げて笑ってしまった。
園を出て、めいいっぱい手を振るケイタ君の横でお父さんは頭を深々と下げていた。
今日の事は一生の中で最も記憶に残る1日になるだろう。
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作者名:緋色 | 作成日時:2021年10月3日 18時