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湯のみ ページ22

おばあちゃん「この所、あまり元気が無いようだね。」

五右衛門「かたじけない。」

縁側にいる五右衛門さんにお茶を出し、隣にそっと座る。

おばあちゃん「Aを心配してるのかい?」

五右衛門「!!」

おばあちゃん「見れば分かるさ!」

雰囲気を読み取るのが上手なおばあちゃん。

感が当たった事にケタケタと笑う所がなんともおばあちゃんらしい。

おばあちゃん「何があったかは分からないけれど、やはり親子だね。Aもお前さんの事よ〜く見てるよ。」

そう言うと、お茶に口を付け真っ直ぐ庭を見据えるおばあちゃん。それにつられて五右衛門もひとくちお茶を飲み、ふんわりと湯気がたった。

五右衛門「今までの事を振り返ると私は親として失格なのです。今の私にAを守りきれるかと思うと不安が募るばかりで…
Aを笑顔にしたいのに、気付く頃にはいつも心配かけてばかりだ。」

少しの間に居心地のいい風が通り過ぎ、秋を感じさせた。

おばあちゃんはスっと目を開けて五右衛門に顔を向けてふと笑みを浮かべた。

おばあちゃん「ふふふっ……」

五右衛門「……!?!?」

おばあちゃん「人の笑顔はおまじないと一緒さぁ。痛いのが次第に飛んでいく。」

おばあちゃん「人の傷は簡単には癒えない。けど、人の笑顔は時折安心感を与えることが出来るんだよ。それだけで心が安らぐ。親であれば尚更ね。」

思い詰める事はないよ、最後にそう声をかけるおばあちゃんの声はいつもより暖かかった。

Aを迎えに行く為家を出た五右衛門の背中を玄関から見送る。

おじいちゃん「五右衛門さんは行ったかな?」

おばあちゃん「ええ、今先程。」

おじいちゃん「おばあさんや、今度A達が来た時は、ご馳走にしてあげよう。」

おばあちゃん「ええ、そうですね。そうしましょう。」

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作者名:緋色 | 作成日時:2021年10月3日 18時

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