15 夕陽の公園で (N side) ページ15
翔さんに誘われて、土曜日に一緒に出かけた。
誕生日のプレゼント代わりに、翔さんの好きな場所に連れて行って
もらったんだ。
昼食の後に迎えに来てくれて、動物園に向かった。
それから、ジプニーという乗合バスに乗って公園に行って、
マニラ湾に沈む大きな夕日を眺めた。
「俺はこの国しか知らないけど、ここから見る夕日は本当に
綺麗だと思うんだ。どんな貧乏人にも、公平に見ることが出来るしね。」
そう言って眺める翔さんの横顔は、悲しそうで、切ない気持になる。
「翔さん、ごめんね。わがまま言ってさ。」
と言って、振り向いてくれた翔さんに、小さい声で尋ねた。
「俺ね、翔さんの事が知りたくて、でも聞けなかったんだ。
スラム出身っていうことくらいしか知らない。翔さんの家族ってもう
亡くなっているの？」
翔さんは、ゆっくりと話しだした。
翔さんの父は、日本人の駐在員だった。翔さんの母は、彼を恋人だと思って
結婚するつもりで付き合っていた。
だけど、彼は任期が終わると、妊娠している彼女を残して、
日本に帰ってしまった。
生まれた翔さんを連れて、彼女は地元の別の男性と結婚した。
だけど、そいつも最低の人間だった。離婚の許されないこの国で、
翔さんの母は、そいつから逃げるためにスラムに入った。
「母は、優しい人だったけど、俺が12歳の時に病気で亡くなった。
まだ俺は子供で、大した治療を受けさせることもできなかった。」
と言って空を見上げた。
翔さんは、そんなに小さい時に、母を亡くしたんだ。
母はいないけれども、父に何不自由なく育ててもらえている俺には、
何も言うことができなかった。
しばらくして、言葉を失っている俺に気づくと、微笑んで俺の顔に手を当てた。
「ほら、そんな顔するなよ。でも俺はラッキーだよ。
ニノに会えて、夢も叶いそうだしさ。」
話をしている間に、夕日は沈んで、辺りは闇に包まれていた。
「そろそろ帰ろうか。松本さんが心配する。」
と言って、公園の出口に向かおうとする翔さんの
手につかまって、ぎゅっと手をつないで歩きだす。
あなたは一人じゃない、俺がいるよ、という気持ちを
なんとか伝えたかった。
翔さんは、驚いた顔をしたけど、嬉しそうに笑ってくれた。
暖かい手が嬉しくて、その日は家まで手をつないで帰った。
16 違う態度 (N side)→←14 誕生日 (S side)
ラッキーアイテム
革ベルト
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 152人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鏡音翔也(プロフ) - ロディさん» おはよ♪うん、近いんだ〜(´Д｀;)ロディさんも仕事とか、頑張ってね!あと、体調も気をつけて! (2013年2月2日 8時) (
レス) id: c591671296 (このIDを非表示/違反報告)
ロディ(プロフ) - 鏡音翔也さん» そっか、テスト近いんだ？勉強頑張ってね(^^)/ (2013年2月1日 22時) (レス) id: 462827a2f8 (このIDを非表示/違反報告)
鏡音翔也(プロフ) - ロディさん» そうだよね、心配。俺も受験が心配(笑)毎日３時間だったんだけど、テスト近いから５時間ぐらいだよ(´Д｀;)これから、勉強してくるねb (2013年1月31日 21時) (レス) id: c591671296 (このIDを非表示/違反報告)
ロディ(プロフ) - 鏡音翔也さん» 本当だ！家庭教師なんだね〜。すごいけどちょっと心配。。 (2013年1月31日 21時) (レス) id: 462827a2f8 (このIDを非表示/違反報告)
鏡音翔也(プロフ) - ロディさん» あ〜、おやつね☆観てて、おいしそうって思っちゃう(笑)ちょっと羨ましいな♪あ、そうそう。翔ちゃん4月からのドラマ、決まったんだってね。忙しいのに…大変だなぁ(・・;) (2013年1月30日 21時) (レス) id: c591671296 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ロディ | 作成日時：2012年12月5日 2時
