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実弥side
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死んだと思っていた。
暗闇の中、お袋を背負って、地獄まで歩こうと思った。
けど、急に現れた親父にお袋を奪われて。
父「お前はまだあっちにもこっちにも来れねぇよ。」
そう言われながら突き飛ばされ、この世に戻ってきた。
父「まだやることが残ってんだろ。
俺の息子だってことに感謝しろ。特別頑丈だ。」
…やること。
玄弥を死なせてしまった今。
一体何が残ってると言うんだ。
「あっ!!」
「あっ意識戻った!」
「不死川さん起きた!!」
実「くそっ」
なんで俺だけが。
これから何の為に生きろって言うんだ。
…いや、残っている。
大事な、大事な人が。
「不死川さん!動かないでください!」
「まだ身体が!不死川さん!」
鬼舞辻無惨が塵となった後、意識を失う直前に目が合った。
酷ェ世界の終わりを、最初に一緒に喜びたい。そばにいたい。
そう思って朝日の中伸ばした手は、届くことはなかった。
隠に止められながら重い身体を起こし立ち上がる。
少し先の、隠が群がっているその場所まで、身体を引きずるように歩く。
皆に泣きながら名前を叫ばれているその姿。
人望を表すようなその光景。
実「オイ。」
「不死川さん!!」
「不死川さんだ!みんなどけ!」
一声で全員が慄く俺とは大違いだ、と鼻で笑う。
実「まだ起きてねェのか。なァ、A。」
そこには苦しそうな顔で眠るA。
ズタズタの隊服から覗く、痛々しいほどの傷。
隣に腰掛け、残った指で手を握る。
ピクリとも動かないその指は、いつもと違って冷たく感じた。
目を覚ませ。
早く握り返してくれ。
実「外に出たぞ。言いたいことが、あるんだろォ。」
声をかけるが、本当にびくともしない。
お願いだ。
彼女だけは、彼女だけは。
彼女だけは助けてくれないか。
今度こそ、救ってくれ、神様。
そのためなら俺は死んでも良い。
どうか、彼女を。
この世界でたった一人の愛しい、彼女を。
実「A。」
名前を呟き、また意識を失った。
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金平糖 - うぅ...感動しました... 一気読みしたんですが、一気読みしたからこそ凄く感動しました。こういう系の話には弱いので、、、 (2021年10月2日 23時) (レス) @page45 id: f3f7dadf62 (このIDを非表示/違反報告)
雪乃 - 不死川の夢小説少なかったのでとても嬉しかったです!出来れば続編も読みたいです、お願いします。一つ…鬼舞辻が鬼゙無゙辻になってたので、そこは直して頂きたいですね。 (2020年12月11日 7時) (レス) id: cedaea8f17 (このIDを非表示/違反報告)
かぼ(プロフ) - ろこもさん» 完結おめでとうございます!素敵な作品でした!実弥と夢主が幸せになれて良かったです(はぁと)ろこもさんも大好きです!ありがとうございました! (2020年8月7日 5時) (レス) id: abbc87cbf8 (このIDを非表示/違反報告)
ろこも(プロフ) - 我妻ライさん» 我妻ライ様!返信遅れてしまいすみません!絶叫嬉しい限りです!元気が出て頑張れました!!読んでくださりありがとうございます! (2020年8月7日 0時) (レス) id: ef1ad6d2c7 (このIDを非表示/違反報告)
ろこも(プロフ) - かぼさん» かぼ様!返信遅れてしまいすみません…!一気読みありがとうございます!実弥さんを表す文章力が足りませんが、より好きになるお手伝いができれば嬉しい限りです…ありがとうございます…! (2020年8月7日 0時) (レス) id: ef1ad6d2c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろこも | 作成日時:2020年7月7日 22時