69 ページ19
**
脱いだ隊服を手にとり立ち上がる。
止血も済んだ。呼吸も整った。
なんだか、さっきより力が湧いてきた気がする。
ガガガガガッ
急に城全体が動き出し、天井が崩れ始めた。
『えっなに!?』
実弥はとっさに大きくバランスを崩したわたしを抱えて走り出した。
いや!えー!姫抱きですか!
そして足早!さすが風!
実「うるせェ、早く着ろ。」
声に出てたなぁ。
そんな呑気なことを考えている場合ではないと、十分にわかっているけれど。
抱えきれない悲しみは消化できていないけど、
大好きな実弥と今、生きて話せる嬉しさを噛み締める。
実弥とこうやって話せるのもいよいよ最期かもしれない。
いままでなんでもっと素直になれなかったのかな。
こんな状況になってからなんて、本当に馬鹿だと思うけれど。
世界が変わったら伝えると決めていたけど、
自分の身体の状況的に、それは叶わないかもしれない。
生きて、言葉にできるうちに。
『ねぇ実弥。』
実「あァ?」
『好 ガガガガガガッ
実「…なんだって?悪ィが今は聞こえねェ。」
初めて口にしたその言葉は、城が崩れる轟音にかき消されてしまった。
無念!無念だな!!!
やっと言えたのに!無念かよ!!
もういいや!勝って生きて言えばいい!
なんなら遺書にも書いたわ!
こんな状況で伝えようなんて、呑気だったなわたしは!
ヤケクソな気持ちでぎゅっと実弥にしがみつくと、実弥はフン、と鼻で笑った。
315人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
金平糖 - うぅ...感動しました... 一気読みしたんですが、一気読みしたからこそ凄く感動しました。こういう系の話には弱いので、、、 (2021年10月2日 23時) (レス) @page45 id: f3f7dadf62 (このIDを非表示/違反報告)
雪乃 - 不死川の夢小説少なかったのでとても嬉しかったです!出来れば続編も読みたいです、お願いします。一つ…鬼舞辻が鬼゙無゙辻になってたので、そこは直して頂きたいですね。 (2020年12月11日 7時) (レス) id: cedaea8f17 (このIDを非表示/違反報告)
かぼ(プロフ) - ろこもさん» 完結おめでとうございます!素敵な作品でした!実弥と夢主が幸せになれて良かったです(はぁと)ろこもさんも大好きです!ありがとうございました! (2020年8月7日 5時) (レス) id: abbc87cbf8 (このIDを非表示/違反報告)
ろこも(プロフ) - 我妻ライさん» 我妻ライ様!返信遅れてしまいすみません!絶叫嬉しい限りです!元気が出て頑張れました!!読んでくださりありがとうございます! (2020年8月7日 0時) (レス) id: ef1ad6d2c7 (このIDを非表示/違反報告)
ろこも(プロフ) - かぼさん» かぼ様!返信遅れてしまいすみません…!一気読みありがとうございます!実弥さんを表す文章力が足りませんが、より好きになるお手伝いができれば嬉しい限りです…ありがとうございます…! (2020年8月7日 0時) (レス) id: ef1ad6d2c7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ろこも | 作成日時:2020年7月7日 22時