79 ページ29
**
そうだった、実弥は、誰よりもあったかい人だった。
悩んでた自分が急に阿呆らしく思える。
目が合った途端に好きだとか、生きててくれて良かっただとか、
いろんな感情がなだれ込んできて。
急に動けないほどに胸が苦しくなる。
視界が歪み、下を向くと足元にポタポタ涙がこぼれた。
あー、もう、泣き止んでわたし!
せっかく呼び止めたのに何も伝えられないじゃん!
それでもおさまらない涙に、両手で顔を覆うと、ふわっと身体を抱き寄せられた。
実弥の匂いだ。
「お前はいつも泣いてるなァ。」
上から響く笑ったような低い声。
ぎゅっと頭を抱えるように抱きしめられる。
いま気持ちを伝えてしまいたい。
そう思って口を開くけど、嗚咽が出てほとんど声にならないのでとりあえず諦めた。
しばらくしてこの発作のような号泣もおさまり、
実弥を見ると、今日はまた一段と酷ェ泣き顔だなァ!と豪快に笑った。
縁側で、おにぎりを食べながら話す。
「…元気にしてたかァ?」
『うん、それはもう。…実弥は?』
「俺ァ平気だ。」
会いたかったものの、とってもうれしい気持ちで胸がいっぱいだからか、
いざ顔を見るとなんだか何から話せば良いかわからない。
会えたらあれ話そうこれ話そうっていろいろ考えてたはずなんだけど、なんだったろうか。
おにぎりを頬張りながら、ぽーっと、太陽を見つめる。
この光景、よく知ってる。
『玄弥くん。』
「あァ?」
『玄弥くんと、よくここで、こんな風にごはん食べながら話してたんだ。』
「…へぇ。」
『玄弥くん、実弥の話しかしなくて。ずっとニコニコしてて。
かわいいなぁなんて、思って聞いてた。』
「そうだな、よく知ってる。」
『ふふ、そりゃそうだよね。』
そう言い笑った瞬間に、実弥に抱きしめられていた。
ふわっと、桜の花びらを乗せた風が吹く。
「なァ。」
「玄弥に言われたんだ。」
「幸せになれって。」
315人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
金平糖 - うぅ...感動しました... 一気読みしたんですが、一気読みしたからこそ凄く感動しました。こういう系の話には弱いので、、、 (2021年10月2日 23時) (レス) @page45 id: f3f7dadf62 (このIDを非表示/違反報告)
雪乃 - 不死川の夢小説少なかったのでとても嬉しかったです!出来れば続編も読みたいです、お願いします。一つ…鬼舞辻が鬼゙無゙辻になってたので、そこは直して頂きたいですね。 (2020年12月11日 7時) (レス) id: cedaea8f17 (このIDを非表示/違反報告)
かぼ(プロフ) - ろこもさん» 完結おめでとうございます!素敵な作品でした!実弥と夢主が幸せになれて良かったです(はぁと)ろこもさんも大好きです!ありがとうございました! (2020年8月7日 5時) (レス) id: abbc87cbf8 (このIDを非表示/違反報告)
ろこも(プロフ) - 我妻ライさん» 我妻ライ様!返信遅れてしまいすみません!絶叫嬉しい限りです!元気が出て頑張れました!!読んでくださりありがとうございます! (2020年8月7日 0時) (レス) id: ef1ad6d2c7 (このIDを非表示/違反報告)
ろこも(プロフ) - かぼさん» かぼ様!返信遅れてしまいすみません…!一気読みありがとうございます!実弥さんを表す文章力が足りませんが、より好きになるお手伝いができれば嬉しい限りです…ありがとうございます…! (2020年8月7日 0時) (レス) id: ef1ad6d2c7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ろこも | 作成日時:2020年7月7日 22時