冨岡義勇×家政婦 3 ページ6
**
真っ白な頭で洗い物を終え、身支度を整えようと寝室の鏡の前に座る。
『あ、かわいい…。』
顔を上げるといつもとなんだか雰囲気の違うわたし。
紅をつけるだけで急に色っぽく見える。
綺麗って言ってくれて、嬉しかったなぁ。
唇に触れると、さっきの義勇さんがフラッシュバックして身悶えしてしまいそうになる。
はぁ、今日の気持ちは大事にしまって、もう寝よう。
………
朝餉を用意していると、眠そうに目を擦りながら義勇さんが現れた。
『ぎ、義勇さん、おはようございます!』
義「あぁ、眠れたか?」
それはもう、まるで眠れなかった。
何度も何度も義勇さんの表情や唇の感覚を思い出してはジタバタしていたら朝だった。
当の義勇さんはこの無表情だ。悲しい。
義「そうだ、A。」
何かを探す義勇さん。
懐に手を突っ込んだかと思えば、考え込むような仕草をしている。
『何かお探しですか…?』
義「昨日街で…。」
なんだか嫌な予感がする。
『…もしかして、これですか?』
今度はわたしが懐に手を入れ、昨日もらった紅を取り出す。
顔を上げると目をまん丸にしている義勇さん。
『もしかして、義勇さん。』
義「…?」
この人、覚えていないのでは?
昨日の夜の、接吻のくだり。
『昨日、いつお休みになりました?』
義「それが、風呂に入ってからのことを、何も覚えていないんだ。」
『…。』
ふと朝餉を運ぶ自分の手に目が行く。
奈 良 漬 け
昨日、米飯と一緒にパクパク食べる姿を見た。
酔ってたんだ、義勇さん。
なんだか少し頭痛がするとか鬼の血気術かとかブツブツ言ってる義勇さんをよそに、
泣きたくなるような気持ちを隠しながら、今日も鮭大根に火を通す。
義勇さんがすでに簪を注文しているなんて、夢にも思わずに。
…後日、甘味処で女子会。
蜜「殿方が紅を贈るって、貴方と口吸いしたいって意味らしいわよ!」
『でも義勇さん、何も考えてなさそうではないですか?』
蜜「他に何も言ってなかったの!?愛の言葉は!?」
『酔ってましたし、特に何も。』
し「そんなだとAさんを他の男性に獲られてしまいますよ、冨岡さん。」
『!?』
義「…A、帰ろう。」
『いいいいつから居たんですか!?』
し「あーもどかしい。」
蜜「早く祝言を挙げる2人が見たいわ〜!」
10人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ろこも | 作成日時:2020年7月6日 12時