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実弥side
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新月か。
最後にAと話したあの夜を思い出しながら帰っていたら、
多数の鬼に囲まれ、不覚にも背中を怪我した。
自分ではどうにも手当てできない箇所な上にうまく止血できていないこともあり、
とぼとぼ蝶屋敷へ足を運ぶと朝になっていた。
敷地が近づくにつれて無意識に目がAを探すが、その姿は見当たらない。
何やってんだ俺は。
と、目の前には胡蝶とその継子ともう1人看護師らしき女。
実「なんだァ、テメェら。」
し「珍しいですね、不死川さんがここに来るのは。」
実「滅多に怪我しねェからな。」
ア「その傷の量で何を。」
実「あァ?」
し「不死川さん、ここで乱闘は許しません。
そして先に言っておきますけど、Aさんを傷付けるようなことがあれば、私たちは隊律違反であろうと容赦なく貴方を殺します。」
実「…別に、アイツに会いにきたわけじゃねェよ。」
看護師になんでこんな乱暴な人、とブツクサ文句を言われながら手当てを受け、
さっさと帰ろうとすると、胡蝶の継子に袖を引かれる。
実「なんだァ?」
そのまま少し歩くと、頭を下げていなくなった。
聞こえてきた笑い声に視線を上げると、縁側に座っている二人に目を奪われる。
Aと玄弥だ。
随分親しそうに話している。
驚いた。
玄弥は最後に会ったあの日から随分と背丈が伸び、がっしりしていた。
そしてAは一段と美しくなり、短かった髪は背中まで伸びている。
急に時の流れを感じた。
いつ知り合った?
まぁでも鬼殺隊である限り、玄弥が治療でここに来るのは当然か。
何を話しているかは全く聞こえないが、さすがに多少は気になる。
ただ、これ以上近づくのは。
玄弥とは数年顔を合わせていない。
もちろん鬼殺隊に入ったことを許諾する気は更々ないし、直ぐにでも辞めてほしい。
その感情は強く、関われば恐らく自分を制御できなくなる。
ただ、今も生きていてくれていることには、心底安心している。
ふいにAが豪快に笑う。
心臓がドクンッと脈打った。
変わらないその笑顔に釘付けになる。
話したい。触れたい。自分に向けて笑ってほしい。
三年経ってもまだ女々しく残る感情に腹が立つ。
最後に話したのはあの夜だ。
俺に会いたいなんて、思ってもいないだろう。
気付いたら横に時透がいた。
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紅葉(プロフ) - ろこもさん» 愛してます!←コイツは頭が壊れた☆ (2020年7月7日 22時) (レス) id: 777c44a6f7 (このIDを非表示/違反報告)
ろこも(プロフ) - 紅葉さん» 紅葉様!コメントありがとうございます!好きと!シンプルに一番嬉しいです励みになります…! (2020年7月7日 22時) (レス) id: ef1ad6d2c7 (このIDを非表示/違反報告)
ろこも(プロフ) - 竜胆友さん» 竜胆友様!コメントありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しい限りです!更新頑張ります…! (2020年7月7日 22時) (レス) id: ef1ad6d2c7 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 好き← (2020年7月7日 15時) (レス) id: 777c44a6f7 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆友(プロフ) - めちゃ面白です。どんどんろこもさんの世界に引き込まれていきました!続きを楽しみに待っております。 (2020年7月7日 8時) (レス) id: 3d9f00433a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろこも | 作成日時:2020年7月6日 2時