30 ページ30
**
みんな、同じことを言ってくれる。
まずは自分を大切に。
自分のように悲しい思いをする人が生まれることが何より嫌だから、一生懸命斬っていたけど。
自分すら大切にできないわたしは。
他人の前に自分すら守れないわたしは。
憎いほど、弱い。
そんないまの状況で、自分のせいで大切な人にまた何か背負わせてしまうなんて、そんなの、嫌だ。
一生懸命脳に血液を巡らせる中で、やっとたどり着いた答え。
それが最善かはわからないけど、口を開く。
『ねぇ実弥、何か、勘違いしてない?』
「…あァ?」
『わたしは今まで実弥に守ってもらいたいなんて、思ってないよ?
覚悟背負うって何?1年ぶりに会ったのに、何を知ってるの?
今のわたしの気持ちなんて、わかるわけない。』
「…。」
『だって所詮は、他人でしょ?
相談したのに悪いけど、わたしの生き方は、自分で決めるよ。』
「そうかよォ…。」
込み上げてくる涙を、実弥を睨むことで堪える。
頭の悪いわたしは、実弥を慕う心を必死で隠して、
こうして心無い言葉を並べるしか、思いつかなかった。
ここでわたしが受け入れたりしたら、実弥はもっと無理をするだろう。
既に背負いすぎてる実弥には、もう、これ以上背負わせたくない。
本当は心の何処かで、嬉しいのに。
大切だと思ってもらえてることが、こんなに、嬉しいはずなのに。
そこから会話はなかった。
実弥がお風呂に入ってる間に、ごめんね、と一筆と今までずっと身に付けていた二人の写真を残して、
こっそり屋敷を抜け出した。
帰路で鬼に会わなかったのは奇跡的だ。
蝶屋敷についたらしのぶちゃんにこっぴどく叱られたけど、
終始泣いてるわたしにアオイとカナヲも寄ってきて結局朝まで寄り添ってくれた。
自分のせいで誰かを犠牲にしてしまう前に。
わたしは剣士の隊服と刀を置いた。
173人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅葉(プロフ) - ろこもさん» 愛してます!←コイツは頭が壊れた☆ (2020年7月7日 22時) (レス) id: 777c44a6f7 (このIDを非表示/違反報告)
ろこも(プロフ) - 紅葉さん» 紅葉様!コメントありがとうございます!好きと!シンプルに一番嬉しいです励みになります…! (2020年7月7日 22時) (レス) id: ef1ad6d2c7 (このIDを非表示/違反報告)
ろこも(プロフ) - 竜胆友さん» 竜胆友様!コメントありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しい限りです!更新頑張ります…! (2020年7月7日 22時) (レス) id: ef1ad6d2c7 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 好き← (2020年7月7日 15時) (レス) id: 777c44a6f7 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆友(プロフ) - めちゃ面白です。どんどんろこもさんの世界に引き込まれていきました!続きを楽しみに待っております。 (2020年7月7日 8時) (レス) id: 3d9f00433a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ろこも | 作成日時:2020年7月6日 2時