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ぼーっと廊下を歩く。
お館様の声が脳内をこだまする。
いますぐ決めなくて良いよ、と言ってくれたけど、
わたしにできること、わたしのやるべきことって、なんだろう。
実「部屋通り過ぎてるぞ。」
『あ、ごめんね?』
実「話せたのかァ?」
『うん、でも、どうしよう。』
実弥は突然泣き出したわたしにギョッとした顔してる。
腕の包帯で涙を拭いてるわたしを見てまたギョッとしたのが見えたけど、
しばらくすると松葉杖ごと抱き寄せて頭を撫でてくれた。
実「お前はいつも泣きすぎだァ。
この一年もこんなだったのかァ?」
『実弥泣くなって言ったじゃん、さっきまで一回も泣いてないよ。』
実「そうは見えねぇけどなァ。」
『ほんとだよ、でもいま実弥を見たらなんだか安心しちゃって。』
実「…うるせェ、相変わらずだなァ。」
『あと松葉杖引っぱるの怖いからやめて。』
実「それは悪かった。」
そのままとぼとぼ歩いていたけど、辺りはどんどん暗くなっていた。
万が一のときに戦えないであろうわたしの姿を見て、
実弥は蝶屋敷より近いらしい自分の家に連れてってくれることになった。
カナエさんとしのぶちゃん、怒るだろうな、と思いながらもお邪魔することにした。
『…は?これ実弥の家?』
「まァ。」
『は?何これ屋敷じゃん!え、どうしたの?』
「柱になったら屋敷もらえた。」
『…え、実弥、柱になったの?』
本日二度目、耳を疑った。
屋敷に上がり込み、実弥の出してくれたお茶を飲みながら近況報告をしあった。
実弥は下弦の鬼を倒し、風柱になったばかりらしい。
前に鬼殺隊に入るきっかけとなったと話していた、匡近さんはその戦いで亡くなったと。
『たくさん、頑張ったんだね…。』
辛かっただろう。
また近しい人を目の前で亡くして、こうして一人で耐えてたのかこの人は。
「なんでてめェが泣くんだよ、相変わらずよくわかんねェなァ。」
ぶっきらぼうな口調。
だけど抱き寄せる手つきは優しくて。
あ、実弥だ、と自分の抱いていた淡い気持ちを思い出す。
「で、お前は?なんであんなところにいたんだァ?」
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紅葉(プロフ) - ろこもさん» 愛してます!←コイツは頭が壊れた☆ (2020年7月7日 22時) (レス) id: 777c44a6f7 (このIDを非表示/違反報告)
ろこも(プロフ) - 紅葉さん» 紅葉様!コメントありがとうございます!好きと!シンプルに一番嬉しいです励みになります…! (2020年7月7日 22時) (レス) id: ef1ad6d2c7 (このIDを非表示/違反報告)
ろこも(プロフ) - 竜胆友さん» 竜胆友様!コメントありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しい限りです!更新頑張ります…! (2020年7月7日 22時) (レス) id: ef1ad6d2c7 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 好き← (2020年7月7日 15時) (レス) id: 777c44a6f7 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆友(プロフ) - めちゃ面白です。どんどんろこもさんの世界に引き込まれていきました!続きを楽しみに待っております。 (2020年7月7日 8時) (レス) id: 3d9f00433a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろこも | 作成日時:2020年7月6日 2時