この世界の終わりには【不死川実弥】

21 ページ21

**


ペコリ、と頭を下げる。


あぁ、ここから、今までみたいには会えないんだ。


こんなに、好きなのに。


いまなら、触れられる距離にいるのに。



でも、駄目なんだ、こんな気持ちは。


伝えたら、おしまいだ。




ただ、もしこれが最期だったら？


最悪の思考が過る。




それでも。


それでも今は駄目だ。




この世界では、普通に人を好きになることが、許されない。


また会えるように、互いに頑張って、生きるしかない。




顔を上げたら、泣いてしまう。


きっと、その胸に飛びこんでしまう。



しばらくそのまま、地面に咲く小さな花を見つめていた。




実弥が背を向けたことを足音で感じ取ってから、その背中を目に焼き付けようと顔を上げる。


また一筋伝う涙を拭っていると、ふいに実弥が立ち止まった。




「オイ、泣くのは俺のそばだけにしろォ。」

『…ふふ、うん。』

「それと、…もし、この世界が終わったら。」

『…？』

「いや、その時に言う。」

『…うん。』

「…これからお互いどんな道になるかわからねェ。
それでも俺がお前と同じ気持ちでいること、忘れんな。」




そう言うと、風のように居なくなった。




この先何があっても、今の言葉があれば頑張れる。


そんな気がした。




涙を拭いて、逆方向を向いて。


大きく一歩踏み出す。




世界が、変わったら。


世界を、変えたら。



また一緒にいられると、信じて。

22→←20

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す