あたらしいうた2

西も東もないような昼下がり ページ49

鏡を見る度に目に入る祐樹の愛情の跡。

その赤い印に触れる度、祐樹の事を思い出して幸せな気持ちになる。


祐樹の残した赤い跡が少しずつ私の消えてきたとき、それぞれのチームのキャンプが始まった。


「今日から一人だっけ？」
画面越しの祐樹が私の後ろを覗き込む様に口を開いた。

『うん。みんな無事にキャンプに行った』
「みんないつ戻って来るの？」
『2週間位いないって言ってたけど』
「A、寂しい？」

祐樹がいたずらっぽい表情で笑う。

『家の中は静かだけど。でもそんないつもみんな来る訳じゃないから』
「麻也君は一人でAに会ってもいいけど、他の二人はダメだからね」
『あはは。祐樹、本気で言ってるでしょ』
「うん。だって不安だもん。大事な彼女の家に俺以外の男が入るんだからね」
『…やっぱり嫌だよね』
「でも、Aは日本人のサポートしたくてドイツに渡ったんでしょ？それは俺も理解してるつもり。
もうすぐ俺がドイツで一緒に住むから、それまではみんなを一生懸命サポートしてあげて」
『…ありがとう、祐樹』
「俺がドイツ行くまでだからね 笑。それと、他の人の家に泊まらない事。麻也君の家もダメ」
『うん 笑』
「Aの家に泊まりに来るのはいいけど。ヤベ、俺束縛しすぎ？」
『大丈夫 笑。ありがとう、祐樹』
「あー、早く会いたい」
『…うん、私も』
「じゃぁ、練習行って来るね」
『頑張ってね』
「ありがと」

画面越しに笑う祐樹が愛しかった。

どんな時でも祐樹は連絡をくれる。

それが心強くもあり、私の気持ちを支えてくれていた。


「ただいまー」

真司と篤人が麻也と一緒に私の部屋に来た。

『何でいつも当たり前の様にうちに来るの？笑』
「キャンプの飯マズいんやもん」
『あはは。みんなキャンプ終わってそのまま来たの？』
「そう。A、飯作って」
篤人がソファーに横になりながら目を瞑る。

『やっぱり 笑。じゃぁスーパー連れて行って。材料足りない』
「了解。じゃぁ行こう」


麻也が車のキーを揺らしながら立ち上がったが、篤人はそのまま寝てしまったようだ。

「ウッチー置いて行こうか 笑」
麻也が笑って玄関に向かう。

『うん、先行ってて』
寝室から薄い毛布を取り出して、寝息をたてている篤人にかける。

真っ黒に日焼けした顔、ソファーから投げ出された足にたくさん残っている傷。


頑張って来たんだね

2週間ぶりに会った篤人が随分逞しくなった様な気がして、しばらく篤人の寝顔を見つめた。

瞳を閉じればそこには風が何もなかった様に通り過ぎて行くんだ→←君の声まだ聞こえず

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