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消えては浮かぶ君との影 すぎていく影 ページ40

篤人の温かな手が凄く心地良かった。

その懐かしい温もりから逃れる口実はたくさんあるはずだった。

でも何故か体は動かない。


二人の間を静かな時間が流れる

今までと何も変わらない時間

二人で幸せだったあの頃に戻った様な錯覚さえ起きる


その柔らかな空気の中、篤人が口を開く。


「A、起こして」

篤人がニヤリと笑い、両手を私に突き出して来た。


『…何?この手』
「引っぱり起こして」
『自分で起きて』
「Aが起こして」
『ヤダ』
「いいから、早く」
『自分で起きれるでしょ?』
「じゃぁまた寝るよ」
『もう 笑。いつからそんなにわがままになったの?』

笑いながら篤人の手を引っ張り、ゆっくりと起こした。


『これでいい? 笑』

手を離そうとした次の瞬間、強く手を引き寄せられた。


抵抗する間もなく、気がついたら篤人の胸の中に包まれていた。


ドクンドクン


篤人の胸から伝わってくる鼓動、懐かしい篤人の匂い


私がずっと覚えていた温もり


忘れる事ができない温もり


私の心が大きく跳ねた瞬間、脳裏に祐樹の顔が浮かんだ。


『篤人、手を離して』
「…嫌だって言ったらどうする?」
『……篤人はそんな事言わないでしょ』
「言うかもよ」
『…私を困らせるような事は、篤人はきっと言わないもん』
「………意地悪しすぎたな、ゴメン」
『…うん』
「A、力なさ過ぎだから。ちょっと俺が手に力入れたら、ふらついてるもんな 笑」


篤人が私の手をゆっくりと離し、いつもの様に笑った。


『もう 笑。ビックリした。早くコーヒー飲もう』
「うん。朝飯何?」
『これから考える 笑』

ドアを開ける手が少し震えていた。


「ウッチーやっと起きて来た」

麻也がコーヒーをカップに注ぎながら笑う。

『ありがとう、麻也』
「A、ウッチー起こすの大変だったんでしょ 笑」
『うん。全然起きないんだもん 笑』
「やっぱりな」
『篤人、顔洗って来たら?』
「…ん」

篤人がゆっくりと洗面所に向かった。

その姿を目で追ってしまう。


ザワザワした心を落ち着かせる様に、ゆっくりとコーヒーを飲んだ。

今はきっと会いたいだけ→←僕ら昇る太陽と一緒に旅をしている



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rockin(プロフ) - ばっさーさん» ばっさーさん、ご心配かけてごめんなさい。諸事情でパスかけてます。今日中には外せると思いますので! (2012年12月20日 19時) (レス) id: 2b31870ecd (このIDを非表示/違反報告)
rockin(プロフ) - けめさん» けめさん、このお話のキーホルダーといえば… (2012年12月1日 16時) (レス) id: 13c04e3708 (このIDを非表示/違反報告)
けめ(プロフ) - 咄嗟に外した蒼いキーホルダーって、あの射的の時のキーホルダーなのでしょうか!? 実は、2人共にまだ大事に持ってるって事ですか!? 何だか……。 (2012年11月30日 23時) (レス) id: f7f419d5c3 (このIDを非表示/違反報告)
rockin(プロフ) - このページでの更新も一杯になってしまったので、あたらしいうた3を作りました。もしよろしければご覧下さい。http://uranai.nosv.org/u.php/novel/rockin6/ (2012年11月30日 22時) (レス) id: 13c04e3708 (このIDを非表示/違反報告)
rockin(プロフ) - りおさん» りおさん、ありがとうございます!凄く素敵な言葉、とても嬉しいです 笑 (2012年11月30日 22時) (レス) id: 13c04e3708 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:rockin | 作成日時:2012年11月13日 21時

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