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羽を広げた空を切りとような雲ひとつ ページ24

「麻也、風呂いいよ」

篤人が髪の毛を拭きながらリビングに戻って来た。

「あのシャンプー何?凄いいい匂いするんだけど」
『篤人、私のやつ使ったの?男性用置いてあったのに 笑』
「…うん。間違えた」

私の隣に座った篤人から私と同じシャンプーの香りがして、胸がドクンと鳴る。

そんな状況に耐えきれず、思わずキッチンへと逃げた。


『喉かわいたでしょ?何飲む?』
「俺ビール!」
真司が嬉しそうに私を見る。

『篤人はオレンジでいい?』
「…オレンジ飽きた」
『もう 笑。わがままなんだから』

ビールと水の瓶を持ってリビングへと戻る。


「何、コレ」

篤人が水の瓶を取り上げて不思議な顔をした。

『ドイツの水 笑』
「なんだ、水か」
『わがまま言うなら飲まないで 笑』
「嘘だって 笑」

篤人が水を勢いよく飲み、思いっきりむせた。

「A、何コレ」
顔を赤くした篤人が苦しそうに私を見る。


『ガス入りの水。ドイツでは普通だよ。うちにそれしかないんだもん 笑』
「ガス入ってるなら、先言えって 笑」

篤人が笑いながらゆっくりともう一度水を飲んだ。


私もシャワーを浴びようとバスルームに行くと、見慣れない色の歯ブラシが置いてある。

篤人はいつも水色の歯ブラシを選ぶ。

私と祐樹の歯ブラシの間に、その水色の歯ブラシは並んでいた。


久しぶりに集合した仲間と会話も弾み、篤人以外はみんなビールをたくさん飲んだ。


夜も更け、真司と麻也は酔っぱらって床で寝てしまった。

『二人とも風邪ひいちゃうよ』

二人の体を揺するが、全く起きる気配がない。


「ほっとけば?笑」

篤人はガス入りの水が気に入ったらしく、それをずっと飲んでいた。

『でも風邪ひいちゃう。二人ともスポーツ選手なのに』
「大丈夫だって。そんなに弱い体じゃない」
『うーん。じゃぁ布団だけ持って来る』
「手伝う」
『ありがとう 笑』


私の後ろを篤人がついてくる。

ペタペタとスリッパを引きずりながら歩くのは篤人の癖。

その懐かしい音に少しだけ胸がズキンとした。


『夏だから薄い布団でいいよね』
「いいんじゃない?」

寝室に入りタオルケットを数枚出すと、何も言わずに篤人が私の手からそれを奪う。

『ありがとう』
「これくらい別に」

篤人が笑って、寝室を見渡す。

「キレイにしてるよね」
『そう?何もないだけ 笑』
「落ち着くね、Aの家」

篤人の視線が一点を見て止まった。


視線の先をたどると、そこには祐樹が置いていった部屋着があった

ふっと夜が横切れば白い笑顔みせる→←浮かべた微笑みはそれに溶け出して



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rockin(プロフ) - ばっさーさん» ばっさーさん、ご心配かけてごめんなさい。諸事情でパスかけてます。今日中には外せると思いますので! (2012年12月20日 19時) (レス) id: 2b31870ecd (このIDを非表示/違反報告)
rockin(プロフ) - けめさん» けめさん、このお話のキーホルダーといえば… (2012年12月1日 16時) (レス) id: 13c04e3708 (このIDを非表示/違反報告)
けめ(プロフ) - 咄嗟に外した蒼いキーホルダーって、あの射的の時のキーホルダーなのでしょうか!? 実は、2人共にまだ大事に持ってるって事ですか!? 何だか……。 (2012年11月30日 23時) (レス) id: f7f419d5c3 (このIDを非表示/違反報告)
rockin(プロフ) - このページでの更新も一杯になってしまったので、あたらしいうた3を作りました。もしよろしければご覧下さい。http://uranai.nosv.org/u.php/novel/rockin6/ (2012年11月30日 22時) (レス) id: 13c04e3708 (このIDを非表示/違反報告)
rockin(プロフ) - りおさん» りおさん、ありがとうございます!凄く素敵な言葉、とても嬉しいです 笑 (2012年11月30日 22時) (レス) id: 13c04e3708 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:rockin | 作成日時:2012年11月13日 21時

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