ラブセレナーデ13

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”翔平には幼馴染みとしか見られてなくて、凄く悔しいんです”

ふと、この前のエリナちゃんの言葉を思い出した。






翔平君の目線を見ていれば、すぐに誰を想ってるかわかるのに

翔平君の目には、エリナちゃんしか映ってない

エリナちゃんの目には、翔平君しか映ってない


気づいてないのは、本人同士だけだよ






目が合った時の二人の嬉しそうな表情を思い出していると、iPhoneが鳴った。

相手は、エリナちゃん。





頭に浮かんだのは、翔平君を見つめている時の幸せそうなエリナちゃんの笑顔。

頬を緩ませながら出た電話の向こうから届いた「Aさん！エリナです」との元気な声に、私は小さく笑った。








A『元気だね、エリナちゃん 笑』

エリナ「元気じゃないです！今から緊張して大変なんです！」





大丈夫だよ、エリナちゃん

あなたの恋は、絶対に叶う


電話の前で緊張するエリナちゃんに、心の中でエールを送る。








エリナ「プレゼントも持って、ケーキも買って、超お洒落して、もうすぐ翔平の家につくんですけど」

A『うん』

エリナ「緊張しすぎて、Aさんに電話をしちゃいました」

A『あはは』

エリナ「実はさっきシャルケの練習場に行って、こっそり内田さんにも元気をもらったんです 笑」



その言葉に時計を見ながら、もうすぐアウェーに行く飛行機に乗った所かな、なんて考えていた。






ケガをしませんように


私が出来るのは、祈る事だけ








エリナ「…翔平の家の前に、ついちゃいました」


電話越しのエリナちゃんの声が、小さくなった。






エリナ「…チャイム、押しちゃいます」


部屋のブザーが鳴る音が、微かに聞こえた。

それと同時に、エリナちゃんの緊張した吐息。



エリナちゃんの緊張する様子に反して、ブザーに反応する音が全く聞こえない。







エリナ「ヤバい！留守の時の事、考えてなかった！」


凄い緊張したのに。翔平のバカ！なんて怒るエリナちゃんに笑っていると、この家のチャイムの音が聞こえた。



誰だろう、なんて考えた時に、「ちょっと計画を練り直してからまた電話します！」と、エリナちゃんとの通話が切れた。





玄関を映すモニターを覗く。

そこに映っていたのは、じっとカメラを見つめる翔平君の姿。






翔「すいません。鍋をご馳走してもらった時に、忘れ物しちゃって」






彼を包む闇に気づいた人は、きっといない


闇に通じようとする扉を、私は開ける。

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