ラブセレナーデ13

6 翔平SIDE ページ6

エリナには、笑ってて欲しい

エリナには、もう悲しい想いをして欲しく無い



そう願う俺は、ただ側にいる事しか出来ない






「そうだ。今日、日本代表戦だった。見ていい？」


エリナの家の小さなテレビをつけた。

ただボーっとテレビを眺めているエリナの目には、きっと何も映ってない。





「…あれ、誰？」


エリナの目には、内田篤人が映っていた。

内田のプレーを、エリナが目で追う。



誰かとぶつかる度に「痛そう。大丈夫かな」と眉をしかめ、内田がいいプレーをすると、エリナが笑った。



「凄いね、あの人。細くて小さいのに、一生懸命で。なんか、感動しちゃった」


エリナのこんな笑顔が見たかった






次の日早速衛星放送を契約しに行き、エリナの家にアンテナをつけた。


どんなに夜遅くても内田の所属するシャルケに試合をエリナは観戦し、エリナの顔に少しずつ笑顔が戻った。




そんな時、ドイツに短期留学の募集を見つけた。


大好きな内田篤人と同じ国にいるだけで、きっとエリナは幸せだろう

すぐにエリナを誘い、寝る間を惜しんで二人で勉強し、短期留学の切符を手に入れた。





・





まさか内田篤人に会う事が出来るなんて、全然思っていなかった。

シャルケの試合を見に行けたらとか、練習を見れたらとか、そう思っていた程度だったのに。


ドイツでたまたま知り合った日本人の結婚パーティーに、内田の姿があった。






翔平、あれ本物かな？

あ！吉田麻也もいるから、絶対本物だ！

やっぱり、カッコいい 笑



エリナの笑顔が嬉しかった。






賑やかな結婚パーティーの中、内田篤人はずっと一人の女性を見ていた。



普通の、女の人。

モデルの様に煌びやかでも無く、スタイル抜群という訳でもなく、ただの普通の人。





話しても、普通の人だった。


仕事もせずに、内田の給料でのうのうと暮らしている女。





なんだ

この程度なら、エリナの方が全然上じゃん




そう思った。





・





内田の練習見学にエリナを連れて行き、俺は用事の入ったフリをして内田にエリナを任せ、途中で帰った。


あの彼女よりも、エリナの方が可愛いだろう

エリナの方が、いい女だろう





そう思ってたのに



「昨日ね。内田さんの家で、彼女さんと3人でご飯を食べたの」


そう言いエリナは、笑った。





無理して笑うなよ、エリナ

内田には、あの女よりもお前の方が似合うと思うよ




無理して笑うお前を守る為に、俺は何でもするよ

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