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「ウッチーだ!!」
日本人の男の子が数人、俺の周りに集まって来た。
さすがドイツに住んでいるだけあり 子供達のほとんどがサッカー教室に通っていて、ドイツでプレーしている俺の事も全員が知っていた。
「ウッチー、サッカーしようよ」
「いいよ」
「やったー」
「湊も行くぞ」と声を掛けると湊は名残惜しそうにAを見つめ、「Aちゃんも一緒に行こう」とAの手を引っ張り、歩き出した。
いいか、湊
Aは、俺のだからな
Aの手を握り歩く湊の後ろ姿にまた心の中で叫んだ俺は、やはり最高ダサいと思う。
・
子供達は必死にボールを追いかけ、転んで膝を擦りむいても歯を食いしばって痛みに耐え、
全力で走って、俺よりも随分と小さい体で必死にボールを奪おうとする。
一生懸命な子供達の姿を見て思い出したのは、サッカーが楽しくて仕方無かった子供の頃の自分。
原点を忘れちゃいけない と、俺は子供達に教わった気がした。
俺がボールを持つ度、お母さん達の黄色い声援が聞こえる。
A、見てるよね
Aの彼氏は、そこそこ人気があるんだよ
だからたまには、ヤキモチくらい妬いてもいいんだよ
チラリとAを見れば、俺の事よりも子供達の姿を笑顔で見ていて。
少しくらい嫉妬してくれてるかな、なんて考えた自分を恥じた。
ドリブルしている時、湊と目が合った。
「湊、打て」
俺のパスに、足を振り抜く湊。
そのボールは、コロコロとゴールに吸い込まれた。
沸くお母さん達。
湊とハイタッチをしようと構えていたが湊は俺の横を素通りし、Aに勢い良く抱きついた。
『湊君、凄いね 笑』
「普通だよ」
そう言い、Aの胸にさりげなくタッチする湊。
湊にパスを出した事を後悔しながら、湊の小さな手に俺はまた嫉妬した。
その日の夜。
俺の腕の中でスヤスヤと気持ち良さそうに眠るAを、月がゆらりと照らしていた。
そんな幻想的な光景に構わず、起こさない様に細心の注意を払いながらAの胸に触れていた俺は、やはり煩悩の塊だと思う。
・
翌日練習を終えた俺は、クラブハウスで取材を受けていた。
「最近とても調子が上がっているように見えますが、今一番のライバルは誰ですか?」との質問に、間髪入れずに出てきた「5歳の湊」との本心をグッと飲み込み、
「…ドイツの、冬の寒さですかね」と、俺は何食わぬ顔で答えた
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rockin(プロフ) - 大野担なマヤニスタ。さん» 大野担なマヤニスタ。さん。大野さんファン、多いな。さすがリーダー。私は『魔王』の成瀬さんにメロメロです 笑。翔平は本当は違う漢字だったのですが、嵐が好き過ぎて…。翔平のキャラに、今は翔君の漢字を使った事に後悔しています…。冷たい翔君の目も好き☆ (2014年10月25日 14時) (レス) id: dc0e1ffc32 (このIDを非表示/違反報告)
rockin(プロフ) - めいさん» めいさん。料理が得意なのはいい事です。まずは、男の胃袋を掴め!と言いますからね。今日から新しい章に移ります。どうかお付き合い下さい! (2014年10月25日 14時) (レス) id: dc0e1ffc32 (このIDを非表示/違反報告)
rockin(プロフ) - mochipandaさん» mochipandaさんの関西弁、可愛過ぎて悶えます。私が男なら、告白してるなきっと。今日から新しい章に移ります。どうかお付き合い下さい! (2014年10月25日 14時) (レス) id: dc0e1ffc32 (このIDを非表示/違反報告)
さとちゃんぽ(プロフ) - rockinさん、こんばんみ(*≧∀≦*)ちょっと、ウッチー!翔平のあの無表情、すぐに忘れちゃダメ!!主人公ちゃんは、疑う気持ちゼロなんだからあ!もう、これらの展開にドキマキしちゃいますぅ(°Д°) (2014年10月24日 23時) (レス) id: f30672dd4c (このIDを非表示/違反報告)
大野担なマヤニスタ。 - ひゃあすみません!文法おかしいですね(;_;) 翔平くんがなぜか櫻井翔くんに脳内変換されます 笑 冷たい目の櫻井くんが思い浮かびます....笑 (2014年10月24日 22時) (レス) id: 0a63f5263a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:rockin | 作成日時:2014年9月2日 9時