ラブセレナーデ12

番外編6 麻也SIDE ページ33

「Congratulations!!」



みんなの明るい声と、パンパンとクラッカーの乾いた音がレストランに響く。

レストランのドアを開けたスイさんが、「…え？」と目を丸くした。





驚くスイさんを、心から嬉しそうに見つめるA。

…を見つめる嫉妬男は、ニヤニヤしていて今日も気持ち悪い。







Aが着ているワンピースは、取材でイタリアに行った時に買ってあげたヤツだよね。

アルマーニの、庶民には目が飛び出そうな位に高いヤツだよね。

値札も見ないで買ったヤツだよね。





似合ってると思うよ。

うん。Aに、凄く似合ってると思う。






でもね、ウッチー。

鼻の下を伸ばしてニヤニヤしているその表情に、周りの人は結構驚いてるよ。


アニカの口なんて、開きっぱなしだからね。

絢子さんなんてもう見慣れていて、苦笑いだからね。




…俺がお巡りさんだったら、変質者と間違えて絶対に逮捕だな









『翠さん。おめでとうございます』


Aが大きな花束を渡した時に、スイさんはこの状況にやっと気づいた。





翠「Aちゃん、これって…」
『今日は貸し切りで、翠さんの結婚パーティーです 笑』
翠「…え？」
『ほら、早く 笑』





Aに手を引かれ、スイさんは用意されている席に近づいた。

繋いだスイさんの手を、待機していた結婚相手の直人さんの手に、Aが託す。



直人さんは驚いているスイさんを見て、優しく笑った。





初めて見る直人さんは背が高く、頭が良さそうで優しそうで、爽やかで。
美しいスイさんと、本当にお似合いだった。






スイさんを見るAは、やっぱり凄く嬉しそう。

Aを見るニヤケ男はニヤニヤしていて、やっぱり気持ち悪い。







・







「Prosit!」

アニカの陽気な彼氏の掛け声で、パーティーが始まった。




ビュッフェスタイルの料理。
たくさん並んだビール。
ドイツ語と英語と日本語が混じる会話。

あちこちで乾杯するグラスの音と、たくさんの笑い声。






幸せな空間は、みんなを幸せにしてくれると思う。


笑顔に包まれた時間。

優しさに包まれた時間。






スイさんはみんなの祝福に幸せそうに笑い、直人さんと目が合う度に更に幸せそうに笑い、


そんなスイさんを、Aははち切れそうな笑顔で見ている。




…ニヤケ男は、きっとはち切れんばかりの煩悩を抱えながらAを見ているのだろう。


Aの首筋には、隠しきれなかった煩悩男の愛が刻まれていた。

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