ラブセレナーデ12

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「蒼だけ、ズルいよね」

ズルいと言いながら、莉子さんが、笑った。




「本当にズルい。行く時は、3人でって言ってたのに。抜け駆けだ」

莉子さんに加勢するように、楓さんが、笑う。




「仕事でドイツに行くついでに、あっちゃんに会うだけでしょ」

莉子さんと楓さんの言葉に笑うのは、蒼さん。





篤人のパソコン越しに映っているのは、篤人の幼馴染み3人。





私は静岡でこの3人に会ったことがある。


…と、篤人が教えてくれた。






でも、私は思い出せなくて。


静岡に行った事も、篤人のご両親に会った事も、篤人の幼なじみのこの3人に会った事も。



何も何も思い出せなくて。






篤人の大切な人に会った事を思い出せずに苦しむ私に、楓さんは「私はAちゃんに意地悪したから、そこを忘れてくれてラッキー」と無邪気に笑い、

その楓さんの笑顔に、私は救われた。






篤人の幼馴染みの3人とスカイプで話すのは、もう何度目だろう。

莉子さんも楓さんも蒼さんも、私を「Aちゃん」と呼び、可愛がってくれて。



「あっちゃんに意地悪されたら、すぐに言いなよ。私達がガツンとあっちゃんに言ってあげるから」

私にそう話す楓さんに「意地悪なんてしねーって 笑」と笑う篤人は、私といる時とは全然違う表情。






篤人が絶対の信頼を置く、この3人が。

篤人の心をいつも支えてくれている、この3人が。

年に2回しか地元に帰れない篤人が冬のオフの全て費やし、事故後記憶を失い長崎に帰っていた私と一緒に過ごす事を嫌な顔せずに快諾してくれた、この3人が。

篤人に、私の知らない表情をさせる、この3人が。



スカイプ越しで会う度、私は大好きになっていた。








「じゃぁ来週、ケルンの駅で」
「よろしくね、あっちゃん」
「ん」



篤人と話す蒼さんの後ろで「まだAちゃんと喋りたい！」「あっちゃーん。私達もドイツに行きたいから、航空券2枚送って。ビジネスクラス往復ね」と騒ぐ楓さんと莉子さんに、

「うるせぇ、早く寝ろ」と篤人が笑い、スカイプを切った。





「…という訳で、来週は一泊の予定で蒼が泊まりに来るから」
『わかった 笑』






ドイツ料理を食いたいって言ってたから、あのレストラン連れてくか。

いや、あっちのレストランの方が蒼好みかも。




ブツブツと呟きながら真剣な顔で悩む篤人は、嬉しそうで。

そんな嬉しそうな顔をさせる蒼さんに、私も早く会いたいと思った

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