アップルソング2

いつも思っていた　君の夢の向こう ページ47

「ヤバい、遅刻！！」



明日香が慌ただしく起きて来たのは、朝の9時。

「10時から仕事なのに」と言いながら、ワタワタと準備をする明日香。
歯ブラシを咥えながら「ウッチーは？」と聞く明日香に、『とっくにリハビリに行った 笑』と、笑いながら答えた。





「行ってきます、A。またすぐに泊まりに来るから」
『待ってる 笑。明日香、お腹すかない？』
「ペコペコだけど、時間が無い」
『おにぎり作ったから、合間に食べて』
「さすが、ウッチーの奥さん。気が利くね」

ウィンクした明日香が、バタバタと出ていった。









美咲が起きて来たのは、10時頃。

「おはよう、A」
『おはよう、美咲』
「ウッチーと明日香は？」
『とっくに、いない 笑』



ハッと時計を見た美咲が「永嗣君、10時30分の飛行機でベルギー帰るんだった。メール入れなきゃ！行ってらっしゃい。もうすぐ妻になる、美咲より。送信、と」


その美咲のメールにきっと川島さんはデレデレになるんだろうなと思い、小さく笑った。








それぞれのチームに戻る為空港に姿を現せた日本代表のニュースが流れたのは、お昼のニュース。
その中でのトップニュースは、やはり川島さんで。


”日本代表GK川島。電撃結婚!!”の文字が、テレビ画面で踊る。






ー川島選手。残りのシーズンの目標は？
「そうですね。無失点、全勝」


ー見ている限り、調子も良さそうですが
「はい。絶好調です」


ー絶好調の秘訣は、何ですか？
「あー笑。実は個人的な事なんですが、結婚する事になりまして」


ーえ？結婚？
「はい。数日中に、妻が婚姻届けを出します」






「妻だって。嬉しい 笑。川島美咲か。世界で一番、いい名前だ」


美咲が、幸せそうに笑った。






ー奥様は、日本に？
「はい。じきにベルギーに来ますが」


ー奥様は、どんな女性ですか？
「えーっと 笑。いつも笑ってて、明るくて。とにかく、いつも僕に元気を与えてくれます 笑」


ー幸せそうですね
「…はい 笑」


ー奥様は、料理上手ですか？
「………まぁ 笑」





川島さんの後ろを、麻也と真司がニヤニヤと通り過ぎて行く。

その後真司と麻也のインタビューが数十秒流れ、日本代表のニュースは終わった。







映像が、スタジオに切り替わる。



「日本代表の守護神川島選手は、一人の女性の守護神にもなったんですね。本当に、おめでとうございます」

と、何とも言えない締め方をしたアナウンサーに、美咲と顔を見合わせ笑った。

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