アップルソング2

強い青色の空 ページ35

「今日の夕飯は、手巻き寿司がいい。せっかく日本にいるんだし」
『わかった 笑』
「よろしく」



見慣れたシャルケの青いジャージではなく、スポンサーが提供してくれたジャージを着て玄関に向かう篤人。
やはり足は、少しだけ引きずっていて。

その姿を見ていた私に気づいた篤人が「そんな心配そうに見なくても大丈夫だって 笑」と、笑いながら玄関を出て行った。






iPhoneを手取り、通話履歴を開く。
一つ深呼吸をして、佐伯さんの番号をタップした。









「内田君の奥さん、お待ちしていました」
『お忙しい所、申し訳ありません』
「いいえ。さすが内田君が選んだ方だな、と思いました 笑」
『図々しいお願いで、すいません』
「全然。むしろ、嬉しいです。内田君は日本代表にとっても大切な選手なので。日本代表の栄養士が待っていますので、どうぞ」
『ありがとうございます』




佐伯さんの好意に甘え会いに行ったのは、日本代表チームの栄養士さん。
その日は、栄養士さんにみっちりと栄養学を教えてもらった。



怪我の回復にいい食材。
調理法。
食材の組み合わせ方。


私が篤人にしてあげられる事。
少しでも、篤人の力になりたい。


持って行ったノートは、教えてもらった情報でいっぱいになった。









玄関が開いたと同時に聞こえたのは、「A〜、ただいま」という、元気な声。


「大津、なんで入るの？まじウザい」
「全然、ウザくない 笑」
「迷惑」
「迷惑じゃありません！」




近づいてくる二人の声。



「A、ただいま！」

篤人よりも先にリビングに入って来た祐樹の笑顔に、また私は笑った。






『お帰り、祐樹 笑』
「なんか久しぶりに会った気がする。俺がいなくて、寂しかったでしょ 笑」
『あはは』
「リハビリ施設、内田先輩と同じなんだよね。マンション暮らしって聞いて、ついて来た 笑。帰るの面倒だから、今日泊まろうかな」

祐樹の言葉に「ここゲストルーム無いから、無理」と、間髪入れずに篤人が答える。




「別にソファーでもいいですよ。なんなら、Aの隣でも 笑」
「大津。今すぐ帰れ」
「嫌です！」
『祐樹はどこに泊まってるの？』
「リハビリ施設に宿泊室があるから。飯も施設で食ってる」
『至れり尽くせりだ 笑』
「ここの方が、至れり尽くせりだと思うけど。そうだ、内田先輩。どうせなら3人で暮らしません？きっと楽しいですよ 笑」



篤人は無言で祐樹の頭に手刀打ちをし、「痛ってー！！」と、祐樹が悶えた。

瞳の中の太陽→←昇る風に乗って

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す