アップルソング2

そのままに　今日をそのままに ページ30

祐樹は、毎日連絡をくれた。
それはメッセージだったり、電話だったり、スカイプだったり。


祐樹は、やはりいつも笑顔だった。






「大津、どうなん？」
『今日、ギブスはずれたって。来週には退院出来るって言ってた』
「それにしても大津、俺らには全く連絡よこさんな」
『私に言っておけば、きっとみんなに伝わるからだよ 笑』
「下心やろ」
『そんな訳無いでしょ 笑』
「モタモタしてると他の奴にポジション奪われるでって、大津に言っといて」
『わかった 笑』



みんなそれぞれ、祐樹の事を応援していて。
それを伝えると祐樹は「真司君に焦らすなって伝えといて」と、嬉しそうに笑った。









「今日も大津から連絡来たの？」
『うん』
「何だって」
『明日から、リハビリ施設で寝泊まりするって』
「順調って事か」
『うん 笑』


篤人もまた、祐樹の事を気に留めていた。




「寂しい？大津がいなくて」
『寂しくないと言えば、嘘になるかな』
「…それって、どういう意味？」
『秘密 笑』
「怪しい」
『怪しくない 笑』
「ふーん」
『篤人、ヤキモチだ 笑』
「違うから」
『へぇ 笑』
「からかってんの？」
『別に 笑』
「お仕置きね。決定」
『まだ、時間が早いよ』
「関係ない」


私の手を引っぱり、寝室に入る篤人。
寝室のドアが閉まるよりも早く、熱い口づけを篤人に贈られて。
唇が重なったまま、強引にベッドに押し倒された。





「頭に来た。手加減しないから」
『…怖いよ、篤人』
「俺がいいって言うまで、イクのは無しね」
『…』
「あ」
『…どうしたの？』
「今日、大丈夫な日？」
『……あまり』




”じゃぁ外に、ね”


先程よりも熱を帯びた口づけを贈られ、心が篤人で満たされていく。





月明かりだけが照らす部屋。
そこには決して色あせない二人の愛が、今宵も存在する。









それは、いつもと同じ日のはずだった。

シャルケの、ホームでの試合。
私は一人、テレビの前で応援していた。


39分に、シャルケの先制点。
44分には、篤人のアシストで追加点。

そのまま試合は進み、ほぼ勝利を確信した後半終了間際。
相手を交わしドリブルをした篤人が、突然グラウンドに倒れ込んだ。



歪む、篤人の顔。
交代を望むジェスチャー。
篤人が手で押さえているのは、今まで何度もケガを繰り返した場所。




お願い、神様。
お願い。




テレビの前で必死に祈る私をあざ笑うかのように、そこに映され続けるのは 苦痛に顔を歪める篤人の表情だった。

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