アップルソング2

花咲けども実はならず ページ27

ちょっとだけ熱っぽいなと思ったのは、朝起きた時。
熱を測ると、 37.5度。



篤人と一緒に暮らす様になってから、熱が出ればすぐ病院に行くようにしていた。
なにより、篤人に風邪を移さない為。
いつもの病院に行くと、診断はやはりただの風邪だった。







「Aー。今日の夜、飯食いに行くわ」

真司から電話が来たのは、夕方に差し掛かった時。



『ごめんね、真司。ちょっと風邪引いちゃったみたい』と断れば、「…もしかして、妊娠したとか？うわっ。楽しみなんやけど。A。あまり動いたらあかんで。今が一番大事な時期なんやろ？ウッチーとAの子供か。絶対に可愛いな」と、相変わらず的外れな事を真司が言って。





『残念ながら、まだ赤ちゃんはいないの。ちゃんと、検査済み』
「なんや。期待したやろ」
『真司が、勝手にでしょ』
「しんどない？」
『大丈夫。たいした熱じゃないし。ありがとう、真司』
「なんか食いたいもんある？」
『篤人が帰ってくるから、平気』
「お大事にな、A」
『ありがとう 笑』





祐樹から電話がきたのは、その5分後。
「Aー。ファンから日本のお菓子たくさんもらったから、届けるね。ついでに、晩飯も食いたい 笑」


祐樹にも真司と同じ説明をして、電話を切った。








インターホンが鳴ったのは、それから30分後。

篤人が鍵を忘れていったのかななんて考えながら玄関を開けると、そこに立っていたのは真司と祐樹だった。




「ちょっと真司君。Aは風邪なので、帰って下さいよ」
「お前が帰れ、大津。迷惑やわ」
「俺はAに、飯を作りに来たんです」
「俺やって、そうや。俺がいるから、安心して大津は帰れ」
「いやいや。真司君、全く料理出来ないでしょ 笑」
「クックパッドがあれば、何でも作れるわ」
「Aのお腹の事を考えると、真司君は何も作らない方がいいと思うんですけど」
「うっさいわ、大津。お前、帰れ」
「嫌です！俺は、Aにおかゆを作るんです！」





キッチンで並んで料理する二人。

「Aは寝てな」と言われたが、心配で仕方が無い。




「大津、そこ邪魔やって」
「真司君。Aは風邪引いてるのに、そんなの食べれる訳無いでしょ 笑」


ギャーギャーと言いながら出来上がった料理は、祐樹が作った鮑のお粥と 真司が作った牛フィレ肉のステーキ。








「…こんなの、風邪の時に食える訳ないじゃん」


袋いっぱいのリンゴを抱え帰宅した篤人が、呆れたように呟いた。

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