アップルソング2

通りをすべる透明な風 ページ23

「真司ー。ビール、もう一本！」
「飲み過ぎやろ、美咲」
「全然飲んでないもーん！」
「ほどほどにしとけって、美咲」
「やだー。真司、早くー」
「飲み過ぎやって。もう、相当酔っぱらってるやろ」
「全然酔ってないもーん」
「酔っぱらいは大抵、酔ってないって言うよな。美咲、これが最後やで？」
「どうかなー 笑」




えへへと笑いながら、ビールを飲む美咲。
テーブルの上には、たくさんのビール瓶が空っぽになっていた。







「Aー。かんぱーい！」
『乾杯 笑』
「美味しいねー、A」
『うん 笑』
「楽しいねー、A」
『うん 笑』
「嬉しいねー、A」
『うん 笑』
「真司ー。バカー」
「なんやねん、それ」
「真司ー。ハゲ」
「禿げてないわ！」



ビールを飲み続ける、女子2人。
そんな2人に付き合う、シラフの男子1人。


3人でたくさん笑った夜になった。









「おい、美咲。ここで寝たらダメやって」
「…うーん」
「美咲、起きろ」
「…真司、うるさい」




テーブルに突っ伏して眠る美咲。
時計は、夜中の3時を廻っている。
真司が一生懸命起こそうとしても、美咲はスヤスヤと気持ち良さそうに眠っていて。
「…永嗣君。今日も、お疲れ様」と幸せそうに寝言を言う美咲に、真司と顔を合わせて笑った。









「どこで寝かす？」
『寝室かな。真司、ゲストルームで寝るでしょ？』
「ゲストルームで美咲が寝てても、絶対に何も無いけどな」
『その言葉、川島さんが聞いてたら怒るよ 笑』
「絶対内緒な、A」
『うん 笑』



軽々と美咲を抱きかかえる真司。
寝室のベッドにそっと美咲を寝かせ、二人でまた小さく笑った。









「…このベッドでAは毎晩、ウッチーにあんな事やそんな事されてんのか」
『真司、気持ち悪い』
「嘘やって」
『ヤダ。気持ち悪い』
「ごめんって、A。冗談冗談」
『もう帰って、真司』
「ごめんって〜。許して」
『ヤダ』
「俺のユニフォーム、あげるから」
『いらない』
「日本の10番を背負う、香川真司のユニフォームやで？サイン付きなら、きっとオークションで高く売れると思うんやけど」
『じゃぁ、すぐにオークションで売る』
「そんな事言うなや、Aー」






リビングに戻っても「A、あそこのチョコ好きやろ。明日買ってくるわ」「A、あの店のクッキーも美味しいって言ってたな。最近チーズ味も新発売されたから、それも買って来るな」と必死な真司に、またお腹を抱えて笑った。

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