アップルソング2

風に吹かれて街に出ようよ ページ21

「ウッチー！行けー！！」



大声で応援する美咲。
周りのドイツ人のサポーターは、それを喜んでくれて。
篤人がいいプレーをする度、私達に乾杯を求めて来た。








「ウッチーって、愛されてるね」
『今この場では、美咲も同じ位愛されてると思う 笑』
「えー。そうかな」
『間違いない』


美咲はiPhoneで川島さんの試合の行方を見守っていて。
しばらくして「勝った！永嗣君、今日も0点に抑えたよ」と、弾ける様な笑顔になった。




ビールを飲みながらシャルケサポーターと盛り上がり、シャルケは敵地ながら0-1で勝利した。
試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、また大きく盛り上がる店内。






”お疲れ様、篤人”

メッセージを一通送り、美咲と乾杯し勝利を祝った。









「A！早くしないと真司の試合が始まっちゃう！」
『うん 笑』


まさかのパブ2軒目。
それが楽しいのも、親友がいるから。
息を切らしながら、二人でパブに入る。
お店にいるサポーターのほとんどは黄色いユニフォームを着ていて、先程のパブよりももっと盛り上がっていた。





「真司、スタメンだ」
『うん』
「見て、真司の顔。私達といる時と、全然違う」
『あはは。集中してるね、真司』
「得点決めたら、うどん作れって騒ぐね」
『そうじゃなくても、いつも騒いでる 笑』






それは、前半24分。
仲間とパス交換をした真司がディフェンダーを軽く交わし、右足でシュートを放つ。
そのボールはゴールネットに突き刺さり、パブにいるサポーターが歓声と共に一斉に立ち上がった。


耳を塞ぎそうになる位の歓声。
それが真司のプレーによるものだと思うと、本当に嬉しい。








「やったー！凄い、真司！」
『ね 笑』
「真司のゴールに、Prostーー！」



楽しそうにビールを掲げる美咲。
それを見たドイツ人のサポーターが周りに集り、また盛り上がる。




私達に贈られる、真司のチャント。
それがとても嬉しくも、サポーターが歌うチャントは次第にシャルケへの攻撃的な歌になって。

私の複雑な思いになんて気づかずに、店内は盛り上がっていた。







「ここにシャルケの選手の奥さんがいるってバレたら、大変だね」
『うん 笑』
「バレたらA、生きて帰れないかもね」
『…美咲。怖い事言わないで』









”スゲー、疲れた”

そんな時に届いた、篤人からの返信。




それを見た美咲が「シャルケの選手からメッセージが届いたなんてバレたら大変だ」と、また楽しそうに笑った。

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