アップルソング2

波の音が記憶に被さって ページ11

カーテンからうっすらと差し込む朝日の光で、目が覚めた。
体に残るのは、心地いい気怠さ。



久しぶりに肌に直接触れる篤人の素肌が、気持ちいい。
瞼をゆっくりと開けると、私を優しい目で見ている篤人と目が合った。







『…おはよう、篤人』
「おはよ」
『早いね。珍しい』
「目が覚めた。随分ぐっすり寝てたね。昨日の夜、そんなに疲れた？」
『…なんか篤人、表情がいつもよりも柔らかい』
「そんなに俺って、いつも険しい顔してる？」
『そうじゃなくて。なんだろう、上手く言えないけど…』
「昔の事を思い出したからかな」
『昔の事？』
「そう。高校2年生だった頃の事」
『まだ、内田君って呼んでた時？』
「そ。初々しかった、あの頃」
『懐かしい 笑』
「あと、内田君から篤人って呼び方が変わった日の事とか」
『…』
「あれから10年も経ったのか。大人になったな、俺達」
『うん』
「あの頃はまだ子供で、手を繋ぐだけでもドキドキして」
『私は、今でもドキドキするよ』
「もっと凄い事してるのに？笑」
『…』
「でも、変わらないものもある」
『例えば？』
「お互いを想う気持ち、とか」
『…うん』
「Aを大切にしようという気持ち、とか」
『…うん』
「あと、…………大津への危機感、とか」
『あはは。大丈夫だよ』
「まだ、時間あるよね」
『うん』
「もう一回確かめるかな。夫婦になったっていう事実」



私の左手の指輪にキスをした篤人が悪戯っぽく笑って。





”つけないからね”


耳元で囁いた篤人に唇を奪われ、再び二人の体はベッドに沈んだ。









「A。やっほー」

パソコンの画面に映るのは、美咲の嬉しそうな顔。
美咲の後ろに映る時計はドイツと同じ時間を刻んでいて、そんな小さな事が凄く嬉しい。





「見て、A。もらっちゃった」

私に左手を見せる美咲。
その薬指には、綺麗な指輪がはめられていて。




『婚約指輪？』
「そう。昨日の夜、渡されたの」
『綺麗だね。改めて、婚約おめでとう』
「ありがとう。幸せ過ぎて、どうしたらいいかわからない」


幸せそうに笑う美咲に、私まで嬉しくなる。






「次に帰国した時、籍を入れるんだ。待ちきれない 笑」
『あはは』
「こうなったら、早く籍を入れないと。この前永嗣君の練習を見に行ったら、ベルギー美女に囲まれてたし」
『ベルギーの人も、綺麗だよね』
「思わず、私のだから触らないでーって、日本語で言っちゃった 笑」


そう言った美咲は、やはり幸せそうに笑った。

今日の太陽　いつも同じ気分→←作者より 1/28　必ず最後まで読んで下さい〜

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