アップルソング

日が沈み夜になる その頃太陽まだ空の上 ページ49

特に決めた訳じゃ無いのに、いつも通りみんなが順番にお風呂に入って。
それ以外の人はリビングで、麻也が持って来たバラエティーのDVDを見てケタケタと笑っている。


いつものオフの前日の光景。
それに、美咲が一緒にいる。



真司と麻也に挟まれソファーでテレビを見て笑う美咲の姿が、嬉しくて仕方が無かった。









「A、随分楽しそうだね」

ダイニングの椅子に座る私の正面に、ビールとガス入りの水を持った祐樹が座った。
ガス入りの水を一気に飲み「やっぱウマい。日本にいた時もこの水が飲みたくてたまらなかった」と、祐樹が笑う。




「わかった。美咲先輩がいるのが、嬉しいんでしょ」
『当たり 笑』
「やっぱり 笑」


ビールを飲む私を、祐樹が楽しそうに見つめて。






『どうしたの？祐樹も、随分と楽しそう』
「Aが楽しそうだと、俺も自然に楽しくなる 笑」
『あはは』
「あ。もう一つ、嬉しい事見つけた」



悪戯っぽく笑った祐樹が指差したのは、私の左手の薬指。
「A、今日の夜はフリーだ 笑」





その私の左手には、すぐに指輪がはめられた。
私の指には、随分とぶかぶかの指輪。
いつの間にか私の後ろに立っていた篤人の左手の薬指に、今まで存在していた指輪。





「うわっ。邪魔者が現れた 笑」
「A。自分の指輪してきて」
『わかった 笑』
「せっかく今夜はAがフリーになると思ったのに 笑」
「大津。帰れ」
「絶対に帰りません！」



私の左手に存在するぶかぶかの指輪は、篤人の小さなの嫉妬。
それがまた私の頬を緩ませる。









「Aー。もっとビール飲もうよ」
『うん 笑』
「明日、みんなオフでしょ？少し位夜更かししてもいいよね」
『あはは』
「ドイツビールって美味しいね。私もドイツに住みたい」
『川島さんの側じゃなくてもいいの？』
「ダメ。絶対、ダメ。永嗣君の側がいい」
『あはは』
「永嗣くーん。明日会いに行くからねー」




美咲と二人でビールを飲み続け、いつの間にか眠ってしまった。
ウトウトとしている時に微かに聞こえて来たのは、篤人と祐樹の声。


「大津。お前はこっちを運べ」
「川島さん怖いので、嫌です。内田先輩が美咲先輩を運んで下さいよ。川島さんも、俺よりも内田先輩が美咲先輩に触れる方がまだ安心でしょ 笑。俺がAを運びます」





ふわりと宙に浮いた体。
私がよく知っている、優しく温かい手。





篤人の香りにまた幸せを感じ、そのまま深い眠りへと飲み込まれた。

作者より 1/24追記→←僕らの住む世界で今日も誰かが叫ぶ

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