アップルソング

僕らの住む世界で今日も誰かが叫ぶ ページ48

「さっき飛行機でもらった耳栓して寝るから。本当に、私の事は気にしない様に。お二人は、いつもの夜を過ごしてね。おやすみ、内田夫妻」と、飄々とゲストルームに消えた美咲。


パタンと閉まったゲストルームのドアを見届けた私達の顔は、きっと真っ赤だっただろう。









「…スゲー恥ずかしかった」
『……私の方が、恥ずかしい』
「だよな」
『うん』
「…どうする？」
『ダメ。絶対に、ダメ』
「だよな」
『うん』
「じゃ、これは？」



グイっと私を自分の胸に抱き寄せる篤人。
ドクンドクンと感じる篤人の心臓が心地よく、また私の胸を高鳴らせる。







『珍しい 笑』
「しばらく離れてたしね。これくらいは、いいでしょ」
『なんか、嬉しい 笑』
「素直だね、今日は」
『いつも素直だよ、私は』
「ふーん」
『篤人は？嬉しい？』
「さぁね」


私を更にグッと抱きしめた動作が、篤人の答え。




ベッドサイドのテーブルに並んだ、3個の指輪。
夫婦という現実がまだくすぐったいまま、ドイツの夜は更けていった。









「帰ったでー、A。あれ？何で美咲がおるん？」
「明日まで内田夫妻の家に居候中。真司、当たり前の様にこの家に帰って来たね 笑」
「この家は、俺の第二の家みたいなもんや。なー、A」


真司の言葉に『迷惑 笑』と答えれば「そんな冷たい事言うなや。俺の事がホンマは大好きなくせに」と、真司が言って。


「真司君。Aは、そんなに真司君の事好きじゃないと思いますよ 笑」と祐樹が笑えば、「お前は黙っとけ。Aは大津の事、これぽっちも好きじゃないわ」と、真司がまたムキになる。



そんな姿を、笑って見ている麻也。
無関心の篤人。

いつもの日常が、また始まった。






「美咲。夕飯作り、ちゃんと手伝ったんか」
「手伝ったよ。この肉じゃが、私が作ったんだから」
「マジか。めっちゃウマそうやん」
「料理だって、随分上達したんだからね」
「んじゃ、毒味でもするか。………美咲。お前、また砂糖と塩を間違えたやろ」
「え？本当？」
「いいから、食ってみろ」
「本当だ、しょっぱい」
「川島さんが可哀想やな。先が思いやられるわ」
「永嗣君は、失敗しても ”次、頑張ってね” って、ちゃんと食べてくれるもん」
「試合の時の川島さんとは、エラい違いやな」
「そこが素敵なの 笑」
「ああ、そうですか」
「うん 笑」



いつもよりも随分と賑やかな食卓。
しょっぱいと言いながらも、美咲の作った肉じゃがは完食された。

日が沈み夜になる その頃太陽まだ空の上→←時計を止めて夜待てば

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