アップルソング

時計を止めて夜待てば ページ47

甘い溜め息を大きく吐き出した篤人が、繋がったまま私をキツく抱きしめた。
私の汗ばんだ首筋に顔を埋め、篤人がもう一度深い溜め息をつく。








「…俺って、動物みたいだな」

小さく笑った篤人が私の顔を見つめ、ゆっくりと唇が重なった。









全てを脱がされなかった服。
ベッドの下に落とされたショーツ。
少しだけ乱れたベッド。
開けっ放しの、ベッド脇のチェスト。
破られた、プラスチックの小さなパッケージ。
汗ばんでいるお互いの肌。
まだ整わない呼吸。
ドクドクといつもよりも早く鳴っている心臓。
一つに溶け合ったままの二人の体。









「こんな予定じゃなかったんだけど。全然、我慢出来なかった」
『…』
「本当はもっと満足させたかったけど、俺が持たなかった。キャンプ長かったしね」
『大丈夫 笑』
「明日はまだアイツがいるし、きっと真司達も泊まりに来るだろうし」
『うん』
「明後日、覚悟してなよ」
『…』
「明後日は、アレをつけないでしてみようか。時間もたっぷりかけて、ゆっくりと」


悪戯っぽく笑う篤人。
ゆっくりと唇が重なった時シャワーの止まる音が聞こえ、二人で慌てて起き上がった。








髪の毛を手で整えながらリビングに戻ると同時に「あー、気持ち良かった。ウッチー、お風呂いいよ」と、美咲がお風呂場から出て来て。





「あれ？二人とも顔が赤いけど、どうしたの？」

美咲の言葉に、きっとまた私達は顔が赤くなっただろう。









「美味しい！相変わらずAは、料理上手だ 笑」

私の作った料理を頬張り、美咲が笑顔になった。




『ありがとう 笑。本当は、何か食べに行こうとも思ったんだけどね。篤人がキャンプから帰って来るし、きっと家でのんびりしたいと思って』
「充分！私もしばらくベルギーにいるんだから、いつでも外食出来るんだしね。Aは、旦那さんの事を一番にしてあげて。新婚さんなんだし 笑」
『ありがとう、美咲』
「ウッチーは幸せものだね。料理も上手くて、ドイツ語も英語も話せて、可愛くて、家事も完璧にこなして。こんないい子を奥さんに出来たんだから、浮気なんか絶対に出来ないね」


美咲の言葉に「しないから」と篤人が笑い、お茶を飲む。







「ウッチー。私、夜は比較的ぐっすり眠れる方だから。物音とかしても、全然起きないし。だから、夜の夫婦生活も遠慮せずに営んでね。さっきみたいに、急がなくてもいいからね」との美咲の言葉に、篤人がお茶を吹き出した。

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